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2009年06月27日

59.別れ・・・そして夢へ(1)

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9月末のシンガポールでの第14戦を控えて、顕児は久しぶりにロンドンに戻っていた。

「次が終わったら日本かぁ。連れて行きたかったなぁ。」顕児はダイニングテーブルに座ってコーヒーを飲みながら言った。

朝食の準備を終えて、テーブルに料理を並べる恭子は、

「来年3人で行けるから。我慢してよね、パパ。」と言いながらお腹を撫でる。

「しっかし大きくなるんだなぁ・・・。パンクしそうじゃない。」顕児は、恭子のお腹を見るたびに怖くなる。

「女性って、凄いんだなぁ。」

「ねぇ。私もびっくりよ。」

「どっちかなぁ・・・。」顕児が言った。

「また言ってる。生まれたら判るわよ。せっかちなパパ。」恭子が笑った。

顕児はグランプリ挑戦1年目とは思えないほど落ち着いていた。

第1戦の優勝以降、4回の優勝、3回の2位、3回の3位と、シリーズランキング2位をキープしていた。

デビューイヤーからシリーズチャンピオンを狙うと言うのが宮城との約束だった。

メディア対応も考慮してセカンド・ドライバーとして登録しているが、宮城の本音は顕児で優勝することでしかなかった。

『残り4戦、とにかく勝ち続けるしかない。』顕児の腹は決まっていた。

そして、その決意が不思議と落ち着きに変わっていくのを感じていた。

『平常心でいられる今、思ったようにやるだけだよな。』そう思いながら恭子と、恭子のお腹を幸せな目で見つめていた。

「さあ、たべよ!」席に着いた恭子が顕児に言った。



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posted by 北乃 道晴 at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 059.別れ・・・そして夢へ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

59.別れ・・・そして夢へ(2)

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シンガポールは暑かった。

各チームとも熱対策で苦心を続けていた。

ミヤギGPでもマシン用のクーラーを大量に持ち込んでいたが、走行中の熱対策には効かない。空力を考慮して作りこまれたカウルを様々に加工して冷却空気の取り込み方法の模索を繰り返した。

「体力的にきつくないか?」宮城が顕児に聞いた。

「ええ、マシンに比べればドライバーなんて楽なもんですよ。」汗だくの顕児が笑った。

「集中力が切れるのが一番怖いからな。休める時にとにかくしっかり休んでおけよ。」宮城はモーターホームを指差して言った。

相変わらず顕児の走りは安定していた。

プラクティスではマシンセッティングに集中し、予選では3戦連続のポールポジションを決めた。

メディアへの対応や、スポンサーとの会合、イベントへの参加と、レース以外の活動も膨大にこなしながら、これだけの集中力を初年から発揮できることに、関係者は驚きを隠せずにいた。

シリーズポイント・トップのホワイトGP、エースドライバーのガールトンも安定した走りで予選2位。

『とにかくガールトンの前に居続けなければ。』顕児は決勝グリッドで隣に並ぶマシンを眺めながら考えていた。



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posted by 北乃 道晴 at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 059.別れ・・・そして夢へ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

59.別れ・・・そして夢へ(3)

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決勝がスタートするとガールトンは絶妙のスタートダッシュから顕児のポジションを奪い取り、一気に顕児を引き離しにかかった。

が、顕児は冷静だった。

1回目のピットインまでガールトンは顕児を充分に引き離すことは出来なかった。

2回目のピットインはガールトンが2周早くピットイン。顕児はここで一気に勝負に出た。

ガールトンが出し続けていたファステストラップを、顕児は1秒近く短縮して2周を走りきりピットイン。再びコースに戻った時にはガールトンと横並びで1コーナーへ飛び込んだ。

「厳しいか・・・?」宮城は思わずうなった。

2周走ってタイヤもブレーキもウォームアップが済んでいるガールトンと、グリップ力も不足しブレーキ力も弱い顕児のバトル。

が、宮城の不安を払拭するように、顕児はまさにギリギリのマシン性能を引き出してガールトンをブロックしながら1コーナーを脱出。そのまま集中力を切らすことなく、ゴールまで走り切ってしまった。

「フェイクではない!次の王者にはケンジ・ミヤギが控えている。」

誰もが信じて疑わなくなっていた。

車検場にマシンを戻して顕児がマシンを降りた時、宮城が複雑な表情で出迎えた。

「どうかしたんですか・・・?」驚いて顕児が宮城に聞いた。

「とにかく表彰式を済ませてしまってくれ。」宮城が顕児に一言だけ伝えると、スタッフが歓喜している群集の元へ戻って行ってしまった。



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posted by 北乃 道晴 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 059.別れ・・・そして夢へ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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