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2009年06月25日

57.ファミリー(1)

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ロンドンに戻ると、顕児はすぐに宮城と角谷に連絡を入れた。

続けて恭子も宮城と白鳥家に決心を伝えた。

「ちょっと痛いなぁ・・・。」宮城は本音を打ち明けた。

3人でF1を走ろう。宮城の大きな夢だった。

今回の恭子と顕児の結婚は、出産を目指していることはすぐに判った。

そうなると、恭子が数年以上はレース活動から身を引かざるを得ないことは避けられない。

「恭子ちゃんは2度とレースをする気は無いのかな?」宮城はそれとなく顕児に聞いた。

「いえ、そうではないと思います。ただ、出産を目指して、時間に迫られている意識は強いようです。」

時間に迫られている。それ以上のことは顕児は答えたくはなかった。
心臓・・・。

宮城ももちろん、恭子が抱えている爆弾のことは良く理解していた。

「判った。これ以上は君たちの問題だ。我々としては、恭子ちゃんとの契約は一旦破棄せざるを得ない。ただし、恭子ちゃんが乗れる条件を整えたら、シートを用意するための準備はあると伝えてくれ。」

そして、宮城の机の上に置かれている3人の写真を、2人は黙って見つめた。



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posted by 北乃 道晴 at 17:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 057.ファミリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

57.ファミリー(2)

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問題は角谷だった。

「どれだけの重責か判ってるのか!?恭子ちゃんの生死にも関わってくるんだぞ!!」角谷が電話口で怒鳴っている。

「そもそもおまえ自身、まだプロレーサーとしてやり抜ける準備が整ってないだろ。」

角谷は同じような話を30分以上も繰り返して言った。

正直なところ、角谷自身が恭子と顕児の結婚と言う事態を本気で考えたことも無かった。これが最大の不安材料になっていた。何かしてやれることがあるのかも思い付かなかったからだ。

「自信があるかどうかはどうだっていいんだ。現実的に、やっていけるかが重要なんだ!」

さすがに顕児も角谷を説得するのに手を余しかけていた。

そのとき顕児の母親が電話口に出てきた。

「恭子ちゃんがそれで幸せを感じられるのなら、命懸けで協力してあげなさい。万が一のことがあったとしても、私たちが全面的に援助するから。」

角谷は、顕児の母親のきっぱりとした発言を横で聞いていて呆気にとられていた。

「おい・・・。そんな綺麗ごとで済む話じゃないぞ。万が一のことがあったら・・・」角谷がそう言いかけると、

「万が一の時のための夫婦なんじゃないの?そして家族なんじゃないの?」角谷を強い語調で圧倒する母親の声を、顕児は生まれて初めて電話口で聞いた。

「顕児、私たちや白鳥家の旅費は全部あんたが用意しなさいよ。」

「う・・・。わかってる。」

何人分の航空券を負担しなければならないのか・・・、ホテル代はいくらになりそうか・・・、思わず顕児は計算してしまった。



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posted by 北乃 道晴 at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 057.ファミリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

57.ファミリー(3)

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「あんた、死ぬわけにはいかなくなるって事だからね。」恭子の母親が、初めて恭子に『恭子の死』に関して話題に触れた。

死ぬことは許されない・・・。

恭子は、母親がいつか早い時期に恭子も死に直面するかも知れないと思っていたことを知った。

だが、それが現実だということも恭子は充分に理解した上で、電話口で自分の決心を伝えている。

「運よく赤ちゃんが授かったとしたら、成人させるまで何としてでも生き続ける。」恭子は誓った。

「単なるスピード馬鹿だと思っていたあなたが、いつの間にか女性、いえママになりたいと思っていたとはね。」自宅の電話口で、恭子の母親は嬉しそうに微笑みながら涙を流していた。

「ありがとう、ママ。」恭子の気持ちを全て凝縮した返事だった。

カートマガジンの竹田の元に、顕児と恭子のニュースが届くまでにはそれほど時間を要しなかった。

その日届いたメールを見つめながら、

「ありゃー・・・。参っちゃったな。」そう言ってデスクの椅子の上で反り返りながら天井を見つめた。

しばらくそのままで何かを考えていた竹田だったが、

「編集長、こんどのヨーロッパ出張、数日伸ばしてロンドンへ寄って来ます。」と言った。



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posted by 北乃 道晴 at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 057.ファミリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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