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2009年06月21日

54.サードドライバー(1)

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ロンドンに戻った恭子を待っていたのは、BPマーチン・レーシングからの解雇通告だった。

「ミスター宮城と契約が済んでいる。違約金も、彼らが用意してくれた。」スコットが残念そうに恭子に言った。

「シルバーストーンのオーウェン校長も応援していたよ。キョーコ。」

恭子は12月から『ラシードHDミヤギGP』チームのF1サードドライバーとなり、同時に、同チームのGP2エースドライバーとして来年のシーズンを戦うことになったのだ。

「ただいま!顕児クンいる?」

ロンドンの自宅に戻ると、恭子は顕児の姿を探した。

「ジャーァァァ・・・。」バスルームから音がする。

恭子がバスルームを空けようとすると、顕児が内側からドアを開けて出てきた。

「お、おい。トイレ中だったんだよ。」顕児が、入って来ようとしていた恭子を見て驚きながら言った。

「顕児クン、宮城さんとの話はどうなっているの?」恭子が混乱した表情で問い詰めた。

「ああ恭子、宮城さんところで来年F1のテストするんだろ。」

「うん。で、顕児クンはどうなってるのよ?」

「俺も宮城GPからGP2で走るよ。ダブルエースってことになってるけど・・・。」笑いながら顕児が答える。

「それだけ?」恭子が聞きたいことは別のことだった。

「ああ。宮城さんところではね。」ニヤッと笑って顕児が答えた。



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posted by 北乃 道晴 at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 054.サードドライバー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

54.サードドライバー(2)

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「?」恭子は顕児の表情にピンとくるものがあった。

「タヨタF1のサードドライバーをやることになった。デラの代わりにね。」少し寂しそうな表情に変わったが、顕児は恭子にしっかりとした声で答えた。

「タヨタなの?」

「宮城さんが島崎さん・・・ああ、FTRSの頃から世話になってるTRDレーシングの人なんだけど、2人で相談したらしいよ。」

「決定したのね?」恭子が聞いた。

「ああ。契約も済んだ。」顕児もはっきり答えた。

「そう。宮城さん、着々と約束を果してくれてるんだ・・・。」恭子が言った。

「約束?」顕児が恭子の妙な表現に引っかかって聞きなおした。

「うん。約束。忘れた?」

「?」

「また3人で走ろうって約束のことよ。」恭子が答えを言った。

「それって・・・。」顕児が驚いていた。

「そうよ、3人で同じチームでレースをするっていうことなの。」

「いつからそういう話をしてたんだ?」顕児が恭子をじっと見つめた。

「中学生くらいの頃からメールで。私が留学するってことを伝えた時にね。宮城さんがいつかやろうって教えてくれたの。」

「俺、何も聞かされてなかったぜ・・・。」顕児が、呆れたように言った。

「そうよ、私だって困難だと思ってたんだから。私を超えようと思ってる程度の誰かさんに話したって、付いて来れなかったでしょ?きっと。」恭子が、バカにしたような笑い方をした。

「くそっ、ずいぶん舐められてたんだな!」顕児がそう言って暫くしてから、

「教えて貰わなくて良かったよ。おかげで、ここまで来れたんだから。」と、本音を漏らした。

「でも、来年が3人にとって本当に厳しい1年になるわよ。3人の誰ひとりとして失敗が許されないから。」恭子が珍しく厳しい表情で顕児を見つめた。

「顕児クンだけでなく、私も、宮城さんも。」

「わかった・・・。そうだよな、目指すものはまだ先にあるんだろ?」

「ええ、『人類初』がいっぱいね。」

『人類初』恭子ははるかが好んで使っていたこの言葉を胸に、いままで全力で走ってきた。

それが、はるかの成し得なかった夢の大きさを知る一つの方法だとも思っていた。



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posted by 北乃 道晴 at 15:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 054.サードドライバー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

54.サードドライバー(3)

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クリスマスイブ、恭子は初めてケーキを焼いた。

数日前から顕児はタヨタF1のテストに参加していて不在だったが、今日の夕方には戻ってくると連絡があった。

買ったばかりのオーブン・レンジでスポンジを焼き、キッチンで型ごと落とす。

「ドン!」

恭子の母親から、スポンジを潰さない大きなコツだと教えてもらったのだ。

「熱が冷めるまで、型からも外しちゃいけない・・・と。」

メモを読み終えてひと休みに入る。

思った以上にスポンジがしっかり膨らんだことで、ちょっとした安堵感を感じていた。

そのとき恭子の携帯電話が鳴った。

「恭子、今晩何か食べたいものあるか?」

顕児からだった。

「何時に着くの?ここに。」

「もうそっちに向かって走ってるから、夕方前には着くんじゃないかな。」

「それじゃ、真っ直ぐ帰ってきて。それから食材とか買いに行きましょう。」

「わかった。じゃ、またあとで。」

そう言って顕児の方から携帯を切った。

そのあと顕児が帰ってきたのは15時を回った頃だった。



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posted by 北乃 道晴 at 17:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 054.サードドライバー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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