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2009年06月16日

51.新生活(1)

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「さあ、ここだ。」

ロンドン市内の閑静だが地の利の良い、歴史を感じさせるアパートの3階のドアを宮城が開いた。

「うわぁ、広ーい。」嬉しそうに恭子が入っていった。

「どうした?」宮城が振り向いて、階段をまだ上りきっていない顕児に声をかけた。

「本当に、用意しちゃったんですね・・・。」戸惑った表情で顕児が答えた。

「結果を出したらって言っただろ、ドイツF3チャンピオン。」

「いや、そうは言っても。」

「両家のご両親からも許可を貰ったし、何か問題あるのか?」

「いや、どんどん環境が変わって行くから・・・。」顕児は開いたままのドアから部屋の中を見てさらに呆気にとられた。

「すごいや。」

「だろ、ちょっと苦労したけどいいものが見つかって良かったよ。」宮城はほっとした表情で言った。

「本当は顕児のために別の家を用意する予定だったんだけどな。2人で一緒に住むって言うから探し直したんだぜ。」

「もちろん、ルームシェアで頼むぜ。何かあったら、ご両親に責められるのは俺だからな。」宮城は顕児をちょっとだけ睨んだ。

「なに言ってんですか・・・。」顕児は返す言葉を思い出せず、宮城から離れて、恭子が見下ろしている窓際まで歩を進めた。



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posted by 北乃 道晴 at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 051.新生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

51.新生活(2)

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「午後から荷物を運び込むそうだから、あとは2人で好きにやってくれ。」宮城が2人の背中から声をかけた。

「今週の金曜までに、マカオ行きの準備しておけよ。俺が迎えに来るから。じゃあな。」そう言うと、いつものように慌しく宮城は出て行った。

「忙しいのに、宮城さんが自分で案内してくれるんだもんねぇ・・・。」恭子が感謝しながら言った。

「そうだなぁ。これからますます忙しくなるしな。」顕児も言った。

「とにかく、私たちはマカオに向けて最後の準備ね。今年は。」

「マカオ、デラクルードも出てくるそうだしな。」

マカオ。

その年の各国のF3トップランナーたちが集まる、F3の世界選手権−マカオグランプリのことだ。

次世代のF1ドライバー候補が集うレースとして、レース関係者だけでなく世界中のファンの注目も集めるビッグイベントとして古くから知られている。

しかもコースは、F1のモナコグランプリ同様に、公道コース。エキサイティングなバトルが繰り広げられることでも有名なレースだ。

顕児もドイツF3でシリーズチャンピオンを獲得。終盤戦となる最後の4戦の中で新しい何かを掴んだ顕児は、恭子とは対照的に絶対的な強さで宮城との約束を果した。

そしてその結果、マカオグランプリへのチケットも手に入れた。

顕児はAGPの許可を得て、ロンドンから単身マカオへ入国する予定になっている。

宮城とAGPとの契約で、顕児はドイツF3に1シーズンのみのエントリーと最初から決められていた。そして、マカオグランプリへのエントリーはAGP側のオプション契約として実現した。

ただし、宮城の計画で顕児は来年から英国を拠点に活動することが伝えられ、今回のロンドン移転となったのだ。

すると恭子も、BPマーチン・レーシングの許可を得て、顕児とマカオへ行くことにしてしまった。



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posted by 北乃 道晴 at 15:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 051.新生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

51.新生活(3)

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さすがに恭子が思いついた顕児とのルームシェア生活に関しては、プランの段階でひと悶着を巻き起こした。

顕児からの電話で『即答』した宮城だったが、実際には独断で決められるわけが無い。

恭子と、顕児それぞれに実家と相談するように、冷静に話をしてくれた。

顕児から連絡を受けた角谷は大反対だったが、白鳥家の方が積極的にルームシェアを認めた。息子親である角谷としては、白鳥家から「どうしてもお願いしたい。」と言われては断りようも無かった。

それが今回の転居の顛末だ。

2人がロンドンに居るのなら・・・ということで、宮城も2人と一緒にロンドンからマカオへ行くことに決めた。

「ふう、どうしよ。荷物がなんにも無いと、コーヒーも飲めないね。」恭子が、珍しく困った顔を見せた。

「なんだ、いつも準備がいい恭子には珍しいな。」顕児が大きなスポーツバッグを床に置いて、ゴソゴソと手を突っ込んでいる。

「だって、昨日電話で連絡が来て、今日から入室できるって言われるし。ビックリしちゃった。はるかちゃんの伯母様だって、国際電話でウチのママに確認してたくらいなんだから。」

「別に、今日来なくたって良かっただろ。」

「だって、顕児クンは今日から入居するって言われたし・・・。」そのあと、何かを言いたそうだったが、恭子は話をやめてしまった。

そのとき、顕児がカバンから水筒を取り出して笑った。

「ほら、ドイツのコーヒーはいかが?お嬢さん。」



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posted by 北乃 道晴 at 17:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 051.新生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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