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2009年06月11日

48.絶対条件(1)

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顕児に関わる大きな問題が浮上していた。

「違約金だけの問題じゃない!」島崎が激しく机を叩いて叫んだ。

テーブルを挟んで島崎の正面に座る男が静かに答えた。

「なんとしても、この話はのんでもらいます。」

沈黙が続く。

「角谷を潰すかもしれないんだよ・・・、宮城。」島崎が興奮を抑えて言った。

島崎の正面に座っている男は宮城だった。

既にシーズンオフを迎えていた。

顕児は破竹の勢いで、途中エントリーにも拘らず今年のFCNシリーズチャンピオンを獲得してしまった。

また、玉井はシリーズ2位、デラクルードも総合5位となる大健闘をみせた。

そこへ、宮城は顕児を今シーズン限りで島崎が監督するTRDレーシングから引き抜き、F3へステップアップさせると言ってきた。

「本人は知っているのか?来年もFCNで走ると、顕児とは契約まで済ませてあるんだぞ。」島崎は続けた。

「本人にはこれからです。でも、間違いなくステップアップを選びますよ、彼は。」宮城が自信たっぷりに答えた。

「ところで、タヨタ自動車は角谷をF1に乗せると決めたんですか?」宮城が続けて言った。

「まだまだこれから実績を積んでいく段階だぞ。そんな判断、誰だって今すぐできるわけが無いだろう。」島崎が憮然とした表情で答える。

「そうだとしたら、角谷を潰すのはタヨタ自動車ってことになりますよ。」宮城が言った。

「僕は、来年のF3の結果で即決します。」

島崎はもう何も言うことは無いと判断した。

「あとは角谷本人に決めさせよう。それでいいんだな?」

「ええ、感謝します。」宮城は恩師でもある島崎に頭を下げた。

数日後、顕児宛てに一通のメールが届いていた。

自室で顕児がそのメールを読んだとき、

「大変なことになったなぁ・・・。」

と、まるで他人事のように独り言を一言だけ吐き出した。



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posted by 北乃 道晴 at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 048.絶対条件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

48.絶対条件(2)

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次の日の朝、顕児は朝食に集まった家族に突然言った。

「今日、学校休む。」

「え?熱でもあるの?」心配そうに母親が聞いた。

「東京へ行ってくる。」

「何かあったのか?」訝しげに角谷が新聞をたたんで聞いた。

「どうも、来年のことを決めなければいけないみたいなんだ・・・。」本人も良く判っていないという表情で、顕児が答えた。

「FCNでの契約、白紙になるってことか?」

「良く判らないけど、そうなるのかもしれない。昨日、宮城さんからメールが来たんだけどさ。」そう言うと、顕児はプリントアウトした宮城のメールを角谷に手渡した。

暫く角谷はメールを見つめていた。

その間に、

「東京へ行くって・・・、今日中に帰ってこれるの?」と母親が聞いた。

「話だけならね。とにかく今日来いって。」

「メールだけでは良く判らんな。ただ顕児、自分の気持ちは決めて行け。中途半端な決断だと後悔するだけだぞ。」厳しい表情で角谷が言った。

「まあ、一晩考えて決めたから。」

顕児は、朝まで眠っていなかった。

「そうか、それならお前の好きなようにやれ。帰ってきたら、母さんにきちんと説明するんだぞ。」そう言って、角谷は無言で食事を始めた。

「ああ、わかった。」顕児も、それきり何も言わなかった。

顕児の母親だけが不安な表情で、2人を見つめていた。



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posted by 北乃 道晴 at 15:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 048.絶対条件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

48.絶対条件(3)

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東京、渋谷に降り立った顕児は、タクシーで10分ほど離れた少し古びれたマンションの前に着いた。

「508号室・・・か。」

宮城からのメールを見直してエレベーターに乗り込み、『5』のボタンを押した。

部屋の前で呼び鈴を押すと、女性がドアを開けてくれた。

「角谷です。宮城さん、いらっしゃいますか?」

「はい、お待ちしてました。そのまま入ってください。」女性が顕児を中へ案内した。

玄関を入ると、マンションの一室とは思えないように、広々としたオフィスが広がっていた。

そのマンションの奥から、

「顕児君、こっちだ!」と呼ぶ声がした。

「お久しぶりです、宮城さん。」宮城が座っているソファーの前で顕児が礼をした。

「いきなり呼び出して悪かったね。彼が、今日の夜には帰国しちゃうんでね。」そう言って、応接テーブルを挟んで宮城の反対側に座っている外国人を見た。

「顕児君、英語は少し使えるんだろ?」

「いや、実際に使ったことが無いので・・・。」

「じゃ、さっそく練習だ。リーベルト、ディスイズケンジ・カドヤ。」

リーベルトと呼ばれた外国人の男が、顕児を見て笑った。

「日本語、話せますよ。私。」



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posted by 北乃 道晴 at 17:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 048.絶対条件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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