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2009年06月10日

47.注目と孤独(1)

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雨のシルバーストーン。

ローラナックのチーム『GPRR』はここ半年以上、メディアの注目を浴び続けていた。底辺カテゴリーであっても、英国ではフォーミュラー・リノーがテレビ放映される。しかし例年とは異なり、日本から来た少女のための特別コーナーが3分枠で設けられ、毎レースの注目ポイントと笑顔が報じられている。

恭子はデビューレースの6戦目をはじめとして、既に5戦連続で表彰台の中央に立ち続けていた。

決して多くは無い観客数ではあったが、「キョーコ!」と呼びかけるファンも増えていた。

久しぶりに訪れたはるかの伯母も、ここ数年の恭子を取り巻く状況の変化に戸惑っていた。

スポンサーのロゴが入った傘を差して、恭子と、はるかの伯母がパドックを歩いていた。

「恭子ちゃん、凄いことになっているのね・・・。」

「そうなんです・・・。でも、応援に応えられる結果を出せているのが救いになってますけど。」

もちろん恭子は負ける気など全く持ち合わせていない。

とにかく目標に向けて全力を尽くし続ける。それしか考えていなかった。

「体の調子はどうなの?」はるかの伯母は、幼くして亡くなった姪のはるか同様に心臓疾患を抱える恭子のことを気遣った。

恭子は、

「病院にも毎週通ってますし、遠征で疲れたとき以外はほとんど気にならないんですよ。はるかちゃんが応援してくれているのかな?」と笑って答えた。

「無理するなとは言い難いけど、体を最優先に注意してね、伯母さんのお願いよ。」優しく恭子の肩に手を回して、はるかの伯母は心配そうな笑みを浮かべた。

「はい。約束します。」恭子も心配をかけまいと、笑って返事をした。



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posted by 北乃 道晴 at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 047.注目と孤独 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

47.注目と孤独(2)

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ピットに着いたとき、マイクとカメラを持つ数人のスタッフが集まってきた。

「キョーコ、少しインタビューさせてもらえる?」女性レポーターが話しかけてきた。

「じゃ伯母さん、奥に居るからね。」と、はるかの伯母はピット奥に用意してもらったキャンプ用チェアに落ち着いた。

恭子はピット前に出て、傘を差したままカメラの前に立ち、レポーターの質問に答えていた。

レースが始まると、マシンはほとんど見えなくなってしまった。

タイヤが跳ね上げ、ウィングで巻き散らかされる水しぶきのためだ。

はるかの伯母は少しピットの出口あたりまで歩み出てみたが、水しぶきが移動していく程度にしか見えなかった。

サーキットビジョンを見てもぼんやりとしか車影が確認できない。

が、はるかの伯母の日常にはありえないスピードで走っているのだけは理解できた。

予選の時の雨量が違ったためポールポジションこそ譲っていたが、恭子は2位のグリッドからスタートし、3周目には相手のミスをついて難なくトップに躍り出ていた。

走り慣れたシルバーストーン。激しい雨の中、恭子がファステストタイムを更新していく。

この場合、2位以下と異なり、トップのマシンはコンディションの面で断然有利だ。

ミスとトラブルさえ起き無ければ・・・チーム監督のローラナックは祈り続けていた。

そして、その祈りはそのまま受け入れられた。

「6連勝だ!」

チェッカーフラッグが振られたとき、雨の中でローラナックがスタッフと肩を組んで叫んだ。



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posted by 北乃 道晴 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 047.注目と孤独 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月11日

47.注目と孤独(3)

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無傷のまま、ただし、びしょ濡れになって、恭子のマシンが車検場に入っていった。

チームスタッフも表彰台へ移動する準備を始める。

「奥さんも一緒に。」ローラナックがはるかの伯母に声をかけた。

「表彰式を見に行きましょう」

はるかの伯母は「ええ。」と答えて傘を開いた。

その日の夜、はるかの伯母の家で恭子はのんびりとくつろいでいた。

「もうお腹一杯なの?」はるかの伯母が聞いた。

相変わらずの少食さに、はるかの伯母は恭子のスタミナを特に心配していた。

「だって、ケーキも食べちゃったし。これでも食べた方じゃないかしら?」恭子が笑って答える。

「平日は学校だし、週末は遠征。のんびり遊びに行きたいと思わないの?」はるかの伯母が、さすがに呆れた顔をして尋ねた。

「そうねぇ・・・。日本にはのんびり帰りたいなぁ。でも、レースが私の一番の楽しみだから。」そう言って恭子が笑った。

「テレビにも映るようになったから、ますます遊びに行き難くなったものね・・・。」

「ううん。それは気にならないわ。だって、もっと沢山のレース関係者に見てもらえるんだから。」貪欲な恭子の姿勢に、はるかの伯母は返す言葉を失った。

だが、日本に帰りたい・・・。これは本当に素直な返事だろう。

いつも日本から帰ってくると、数日は本当に寂しそうにしているのが判るからだ。

中学2年生から留学してきて丸2年。

年に1回しか日本に帰ろうとしない。

「今年はいつ日本に帰るの?」はるかの伯母が聞いた。

「たぶん帰れないと思う・・・。」少し寂しそうに恭子が答えた。

「ただ・・・。」

「ただ?」強く興味を惹かれるように、はるかの伯母が聞いた。

「こっちに来てもらえたらなぁ・・・。」恭子が何かを考えながら答えた。

「あら、それ、良いじゃない。」はるかの伯母がすぐに賛成したが、恭子はそれに答えることは無かった。



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posted by 北乃 道晴 at 08:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 047.注目と孤独 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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