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2009年06月07日

44.準備(1)

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「おー、寒くなってきたなぁ。」千葉が解体工場の外でタバコを吸いながら空を見上げた。

「雪はかんべんして欲しいな・・・。」

解体工場の裏手にはフォーミュラーカーが整然と並んでいた。

数人のスタッフとともに純也は、その中の1台の整備をしている。

そして工場の片隅には、さらに2人の影があった。

「顕児、これと同じナットをあと30個くらい探してきてよ。」孝雄が油まみれになって言った。

「うん。」顕児は孝雄から手渡されたナットをメガネレンチを持って、ガレージ外に放置されているバラバラのマシンの傍に近付いて行った。

顕児が捨ててあった紙箱にナットを50個近く入れてガレージに戻ってくると、千葉が孝雄のそばに立っていた。

「けっこう器用だな、お前さん。」千葉が孝雄に声をかける。

「純也さんが色々教えてくれるので助かります。」孝雄が、手を休めずに千葉に答えた。

「そろそろ皆で飯でも食いに行かないか?」千葉が時計を見ながら言った。

「もうそんな時間ですか。じゃ、クルマ回してきますよ。」純也が千葉の後ろで言うと、すぐにガレージを出て行った。

千葉自動車サービスは郊外の林の中にぽつんと立っていて、近所には住宅はおろか店も無い。

毎日昼どきに誰かがワンボックス・カーを運転して、10分ほど町へ降りたところにある食堂へ行くのが常だった。




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posted by 北乃 道晴 at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 044.準備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

44.準備(2)

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「チャーハンセット3つ、ラーメンセット3つ、カレー2つね?」食堂のおばさんが注文を確認して厨房に戻って行った。

「もう少しで形になりそうだな?」千葉が孝雄と顕児に向かって声をかけた。

「問題はエンジンですねぇ。」純也が答えた。

「ちょうど今、使えそうなタマが転がってないんですよ。」

「まあ、そっちはおれの方で探せるから。」千葉が言った。

「で?FCNは何回乗せて貰った?」千葉が呆れたように言った。

「先週で3回目です。」顕児が答えた。

「少しは乗れるようになったのかよ?」

「玉井さんのタイムを越せる時はあるんですけど、バトルだとどうしても付いて行けない場所があって・・・。」

「おいおい、玉井は今年のシリーズ3位なんだぜ。たった3回で追いついちゃったのかよ・・・。」純也が驚いて顕児を見た。

「社長、こんな奴にマシンをタダでくれてやって練習させること無いですよ。甘やかし過ぎですって。」純也は本音で言った。

「まあ、ムカつくけどな。まさかFTRSでスカラシップ取ってくるとは思ってなかったからなぁ。」千葉も憎憎しく顕児を見た。

「最近は恵まれすぎてますよ、どう考えたって。」純也が続ける。

「まあ、マシンを組み立て始めてから合格通知が来ちゃったからなぁ。出てけとも言えんし。」千葉も想定外だったようだ。

そして顕児と孝雄に向かって言った。

「その代わり、筑紫の1000コースを借りた時しか走らせないからな。レースはFCNに専念しろよ。FJは16歳になるまでの練習用だからな。」と厳しい表情で千葉が言った。

「はい。」顕児が感謝を込めて頭を下げた。

「おまちどう。チャーハンセットはだれ?」食堂のおばさんが、美味そうな匂いのチャーハンセットを運んで来た。



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posted by 北乃 道晴 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 044.準備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月08日

44.準備(3)

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恭子は瀟洒なオフィスのソファーに座らされていた。隣にはシルバーストーン・レーシングスクールのオーウェン校長が座っている。

「オーウェンさん、タバコ吸っても良いですよ。」恭子がクスッと笑った。

ヘビースモーカーのオーウェンは恭子に配慮して、ずうっとタバコを我慢していた。

「ノー、ノー、気にしないでおくれ、キョーコ。」オーウェンは恭子の頭を撫でた。

ちょうどそのとき、オフィスのドアが開いた。

「ウェルカム、オーウェン!」オーウェンと同年輩くらいの男が、笑顔で入ってきた。続けて、30代前後の男と、まだ20代くらいの女性も入ってきた。

「キョーコ、ローラナック氏だ。」オーウェンが紹介した。

「お嬢さんが、10年に1人の逸材か・・・。」そう言って恭子にローラナックは手を差し出した。

「キョーコ・シラトリです。光栄です。」緊張しながら、恭子は握手に応じた。

「1年限定でフルサポートするという条件だったよね。結果は必ず出すって。」ローラナックはオーウェンを真剣な表情で見た。

「フォーミュラ・レースどころか乗用車も運転したことも無いんだろ?結果まで保証していいのかい?」

「彼女には来年すぐにステップアップして貰わなければならないからね。フォーミュラー・リノー程度で時間を無駄にしたくないんだ。」オーウェンも真剣な表情で言った。

「相変わらず口が悪いよな。全額無償の頼みに来ておいて、悪口まで言うんだから。」ローラナックは苦笑いしながら恭子を見た。

「シリーズ3位以内だよ。特に君のような華奢な子は、しょっぱなから体当たりのターゲットにされるはずさ。」

「でも、ゴールには私が最初に戻ってきます。」恭子はうっすらと笑みを浮かべて、ローラナックを見つめ返した。



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posted by 北乃 道晴 at 08:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 044.準備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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