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2009年06月03日

42.再会(1)

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FTRSでの失意を跳ね飛ばすように、その後のレーシングカートKF1クラス第5戦から最終戦の第8戦まで、顕児は驚異の完全優勝を続けた。その結果、シリーズ全8戦のうち7勝、リタイア1回という文句なしの成績でシリーズチャンピオンを獲得した。

「顕児君、来年どうするんだい?」カートマガジンの竹田が第8戦の表彰式のあとに顕児のところへ来て聞いた。

「カート続けるんだろ?」竹田が心配そうに聞く。

「まだはっきりとは決めてないんです。本音ではフォーミュラに行きたいんですけど。やっぱり・・・。」顕児が正直に竹田に答えた。

「マシンかぁ・・・。」竹田が、ちょっとほっとしながら言った。

「はい。本物のクルマはさすがに・・・厳しいですよね。」顕児はじれったそうに答えた。

「でも、カートで今年同様の成績を来年も出し続けるのだって大きなアピールポイントになるかもよ。僕自身、このまま君がカートで終わるのは嫌だしね。」竹田も本音を打ち明けた。

「ありがとうございます。」ちょっと照れたように顕児が礼を言った。

「今の多くのF1ドライバーがカートからどうやってステップアップして行ったか、一度細かく整理してみるよ。こんど時間作って話そうよ。」竹田が、顕児を励ますように言ってくれた。

「はい!」顕児も、応援してくれている人がまた1人居る事を知って嬉しかった。

「とにかくその前に、今年最後のビッグイベント、ワールドカップで優勝して欲しいよ。ね、顕児君。」

「そうですね。世界に名前売り込めるチャンスですもんね!」

「その意気だ!」

まだ、カートでやれることがある。それをしっかりやり切る。

竹田との会話で、顕児はあらためてモチベーションを高めることが出来た。



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posted by 北乃 道晴 at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 042.再会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

42.再会(2)

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今年最後のKF1イベントとなるワールドカップが金曜日から鈴馬で始まった。

しかし、レース当日を迎える前から顕児は落ち着かなかった。

公式練習が始まる前にしておかなければならないことがある・・・と、ずっとそれを待ち続けていた。

それは・・・。

「このエントリーリスト見たか!?」

半月前に最初に気付いたのは孝雄だった。

渡されたリストを見たとき、顕児は素直に驚いた。

英国からのエントラント名に『Kyoko Shiratori』と記されていた。

「恭子!?」

すぐさま2人はインターネットで情報を集め始めた。

惜しむらくは英語圏の情報しかなく、恭子に言われてようやく学年トップの成績になった顕児の英語力の範囲に限定されてしまったが。

少なくとも判ったことは、今シーズン途中からエントリーした日本の小さな少女が驚愕の速さを最終戦まで見せつけ続けたということだった。

F1の伝統のサーキット、シルバーストーンのスクールが全面的に後押しをしていて、この若さですでに将来のF1での活躍が嘱望されている天才女性ドライバーとも書かれていた。

『これが恭子の目的だったんだ・・・。』その時初めて、顕児は全てを理解したと思った。

「ここまで秘密にやる必要があったんだろうか・・・。」ポツリと顕児は言った。

「あったんだろうな。その必要が。だから、こんなすごい結果を残させたんだよ。」孝雄が愕然としながら答えた。

あとで判ったことだが、この恭子の活動は、はるかの伯母以外には知る者がいなかった。

両親ですら何も知らされていなかったのだ。

「ストイックすぎるなぁ・・・。受験を決めた6年生の時から、ずうっとこのことだけを考えて達成してきたとしたら・・・。努力する天才は最強だぞ。」自宅に戻ったとき、角谷が顕児に静かに語った。

だが、その恭子といよいよ会える。いや、とうとう直接戦える。

今まで何も知らされずにいた怒りや寂しさよりも、喜びと期待の方が顕児の気持ちの中でどんどん膨らんで行った。



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posted by 北乃 道晴 at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 042.再会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

42.再会(3)

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ピットの中で落ち着かない時間を過ごす顕児に、孝雄が
「バレル・カートのピットにはまだ来ていないみたいだ。」と教えてくれた。

「いや、どうせコースで嫌というほど会えるから。」と、顕児も気持ちを切り替えて答えた。

練習走行が始まった。

顕児がすぐさまコースに飛び出していった。

『おれはここに居るぞ!』とアピールするかのように。

続々と各国のカーターもコースインして行く。

デラクルードもコースインして行った。

そして・・・。孝雄が見つめていたはるか向こうのピットの前から、ピンクのカートが現れた。

そしてピンクのウェアの小さなドライバーが静かに歩み出てきた。

「恭子ちゃん・・・。」丸山自動車のピットで、孝雄がポツリと呟いた。

初めて恭子をカートに乗せたあのときを、孝雄はいま重ね合わせて見ていた。

そして、いま孝雄が見つめている恭子は、自らの手でカートを押し出して軽快に飛び出した。

ピットロードを加速しながら孝雄の目の前までピンクのマシンが迫ってきた。

その瞬間、ピンクのウェアの恭子が振り向いて、敬礼するように右手の人差し指と中指をヘルメットにタッチして通り過ぎていった。

「いまの、恭子ちゃんだよな?」角谷が孝雄に言った。

「ええ・・・、ええ!恭子ちゃんですよ!戻って来てくれましたよ!」孝雄が涙目で答えた。



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posted by 北乃 道晴 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 042.再会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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