株式会社小学館集英社プロダクション
↑「ヘヴン」掲載中!一括で読めます。

ブログ内の検索


2009年05月28日

37.帰国(1)

人気ブログランキングへ

「さんざん気をもませやがって・・・。」孝雄が、久しぶりに笑っていた。

「あー、ほっとした。」角谷も一気に疲れを感じていた。

岐阜県の荒波サーキットで開催された、西地区全日本カート選手権KF2クラスの第4戦と全日本カート選手権KF1クラスの第5戦、第6戦の全日程が日曜日に終了した。

前戦までもめていた顕児の危険行為に関しては、「世界に通用するドライバーを育成していく上では、多少のラフファイトも経験すべきだ。」という協会の重鎮の意見を尊重した上で、当面は経過観察という但し書き付きでお咎め無しの判断が下った。

しかし、顕児本人の意識の変化が、第1戦同様のクリーンかつダントツの走りを蘇らせた。その結果、文句なしの4戦連勝を勝ち取った。

「しかし、デラクルード君のあの攻撃的な走りはやばいかも。」孝雄がタイムチャートを見ながら言った。

「うん、何か掴んだみたいだ。いきなり速くなってた。」顕児も、2位に入ったデラクルードの速さに少し驚きを感じていた。

「そうそういつまでも1人勝ちできるもんじゃないだろ、顕児。」角谷も正直焦りを感じながら、気を引き締めるように顕児に言った。

「あと2戦勝たなきゃ、ワールドカップ参加を決定的に出来ないしね。」顕児はまだ先を見据えていた。

ワールドカップといっても、KF2クラスの場合は同時開催されるアジアパシフィック選手権の位置付けになる。

表彰式を控え、顕児たちがパドックでくつろいでいる所に、そのデラクルードが駆け込んできた。

「お、おい角谷!恭子ちゃんが来てる!」



ヘヴン TOPへ

posted by 北乃 道晴 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 037.帰国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月29日

37.帰国(2)

人気ブログランキングへ

全員が驚いた顔で周囲を見ると、昨日と今日のKF1で3位入賞、そして初優勝を挙げた道下と恭子が並んで歩いてくるのが見えた。

「恭子ちゃん・・・、すっげー。モデルみたいになっちゃって・・・。」デラクルードの鼻の下が伸びていた。

恭子を挟むように、道下、デラクルードが両脇を固め、顕児がテーブルの反対側に座っていた。

角谷と孝雄は若い集まりには入れてもらえずに、片付けをしながら憂さを晴らしていた。

「1人で来たの?」道下が驚いたように確認した。

「はい。昨日日本に帰ってきて、ちょうど今日KF2の決勝だって聞いたから。」

「お、俺の走り見てくれた?」デラクルードが顔を赤くして恭子に聞いた。

「強い走り方になりましたよね。見ててワクワクしちゃいました。」

「へへぇ、良かったぁ。」

「でも、恭子ちゃんが戻ってくるのずうっと待ってるんだよ。」道下が、本音を打ち明けた。

「まだ、俺たちに勝てそう?」

「うーん・・・。それは判らないですよ。一緒に走ってみないと。」

「戻ってくるんだよね?」じれったそうにデラクルードが口を挟む。

「まだ・・・、どうかなぁ・・・。」はぐらかすように恭子が答えた。

「まだ黙秘かよ・・・。」顕児がふてくされたように言った。

「あら?なに、その言い方。」恭子が睨む。

「うわ顕児、怒られてやんの。」嬉しそうにデラクルードが笑った。

そして「ね、ね。まだ誰とも付き合ってないよね?」と恭子に直球で質問した。

この質問に、道下も、そして顕児までも息を飲んだ。

「やっぱり、向こうだと男性が優しくて素敵ですよぉ。」恭子が皮肉っぽく言った。

「で・・・?」



ヘヴン TOPへ

posted by 北乃 道晴 at 08:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 037.帰国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

37.帰国(3)

人気ブログランキングへ

「えへ、ごめんなさい。もう、付き合っている人いるの・・・。」恭子が少し照れたように言った。

デラクルードが「くっそー!」と椅子の背もたれに寄りかかって叫んだ。

道下も無言で、渋い顔をした。

そして、顕児も目を点にして恭子を見つめた。

「ほらほらぁ、表彰式始まっちゃうよ。みんな主役なんだから、元気出して!」恭子がケラケラ笑った。

3人はますます暗い表情になっていた。

顕児たちのワンボックス・カーは恭子を乗せて帰途に就いた。

高速を走り出してすでに2時間。角谷が運転している横で、孝雄がぐっすり眠っていた。

顕児と恭子は後ろの席に並んで座っている。

顕児には聞きたいことが山ほどあった。

が、とにかく一番最初に確認したいことは1つしかなかった。

「付き合っている奴がいるって・・・、本当なのか?」

角谷の耳に聞こえないように目いっぱい声を細めて、突然、顕児が恭子に聞いた。

顕児の顔には落胆の表情がはっきりと映し出されていた。

「うん。」恭子も声を細めて、嬉しそうに言った。

「そうか・・・。」きっぱりと言い切った恭子の答えを聞いて、もう顕児は何も話す気力が無くなった。

「そんなこと、何で気になってるのぉ?」小声で再び恭子が言った。

その時、顕児の手を恭子が強く握った。

顕児はその瞬間、ようやく気付いた。

そして、恭子の手を強く握り返した。

「うふふっ。」孝雄が目を覚ますくらい透き通った弾む声で恭子が笑った。

「何か面白い話してんの?目覚まし代わりに聞かせてよ。」角谷がルームミラーで2人の顔を覗く。

「だって、顕児君がスゴイくだらないこと言うんですもん。」恭子が笑った。

その隣で、顕児が真っ赤な顔をして、安堵した表情に変わっていた。

もちろん夜の照明で、誰にも赤い顔をしているとは気付かれなかったが。



ヘヴン TOPへ

posted by 北乃 道晴 at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 037.帰国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




楽天 ネックレス
エコバッグ
エルメス
落天rakutenの砂時計
モータースポーツ 電動レーシングカート

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。