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2009年05月28日

36.沸騰(1)

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西地区全日本KF2クラス第2戦、第3戦での顕児の走りは、第1戦とは明らかに違っていた。

はっきり言えば、けんか腰のレースを繰り返し、協会でも問題視されていた。

確かに速いが、レース中のバトルといえる範囲を超える悪質な追い抜きを繰り返し、中にはコースアウトさせられて怪我をするドライバーも居た。

現時点で、顕児は3戦連続優勝の結果を残してはいたが、第4戦以降のエントリーを許可すべきかどうかで大もめになっているのだ。

顕児が荒れている理由は簡単だ。

恭子が何も言わずに顕児の目の前から姿を消したからだ。

もちろん、恭子の母親は連絡先を顕児に教えてくれた。

だが、顕児から恭子に連絡を取る気にはなれなかった。

『何で恭子から連絡して来ないんだ!』

それだけで、顕児の短気に火を点けるのには充分だった。

夏休み最初の週末が第4戦。

孝雄も、顕児の態度にさすがに愛想が尽きそうになっていた。

「角谷さん、このままじゃ俺、第4戦には行きたくないですよ。それに、参加拒否される可能性だってあるし。」孝雄が仕事中に、角谷に愚痴をこぼした。

「すまん。あのバカ、まだ子供のままだったようだ・・・。」角谷が苦々しく答えた。



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posted by 北乃 道晴 at 17:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 036.沸騰 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

36.沸騰(2)

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7月中旬の暑さが、さらにイライラした気分に輪をかける。

やり場の無い怒りを抑え切れずに、顕児は堤防の土手に腰掛けて川の流れを見つめていた。

「俺、何やってんだろ・・・。」

「おや?不良少年、何しょげてる?」後ろから男の声がした。

「なんだ、このや・・・」とっさに振り向きながら叫びかけた顕児は、思わず口にフルブレーキをかけた。

「久しぶりだな、角谷。」

小学校4年、5年と顕児と恭子の担任だった高井が堤防の上に立って笑っていた。

「なんだ、小学4年の夏に逆戻りしてたのか・・・?」顕児の話を一通り聞いて、高井が呆れた顔をした。

もちろん原因が恭子だとは高井には言っていない。

あくまでカートで一番の友人でライバルだった奴が居なくなったとだけ説明した。

「そういえば恭子ちゃん、世界に飛び出したんだってね。」高井が言った。

「世界・・・ですか。」

「ああ、まあカートは辞めたのかもしれないけど、心臓に不安を抱えたままで飛び出して行ったのには正直驚いているよ。」

それは確かだ。顕児もそれは素直に認めている。

「そのうち、僕らを驚かせてくれる日が楽しみだよ。何をしてくれるかは判らないけど。」高井が楽しそうに笑った。

「・・・。」

「で、君はまだふてくされ続ける予定なの?」高井が顕児に言った。



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posted by 北乃 道晴 at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 036.沸騰 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

36.沸騰(3)

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「その友人も君に負けずに成長したくて、次のステップに飛び込んで行ったんじゃないの?君に勝つためにそうしたのなら、わざわざ断って行くかな?ライバルに。」

「・・・。」顕児は黙って高井の話を聞き続けた。

「顕児がそのライバルの立場だったら、いきなりぶっちぎって驚かしたいと思わないか?」

「ふっ・・・。」思わず顕児は吹き出してしまった。

「ん?」高井が顕児を見つめる。

「そうだよね、先生。あいつ、俺を出し抜こうとしてるんだよな。」顕児はようやく吹っ切れた。

顕児が一番好きな女の子。でもそれ以前に、恭子は俺を相手にしないくらいの実力を持った最大のライバルだった。

「俺、バカみたいだぁ。」土手に寝そべって顕児が笑った。

何を目論んでるか知らないけど、恭子なんかに驚かされ続けてたまるか!顕児は、腹の奥でそう呟いた。

「バカみたい?昔からバカだったぞ。」顕児の笑顔を見て、高井は嬉しそうに言った。



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posted by 北乃 道晴 at 21:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 036.沸騰 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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