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2009年05月26日

34.旅立ち(1)

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小春日和の日曜日、桜が美しく咲き誇っていた。

恭子ははるかの家を1人で訪れていた。

制服姿のまま正座して、はるかの遺影の前でしばらく祈りを捧げる恭子。

「本当に久しぶりね、恭子ちゃん。」

声をかけられて恭子はそっと目を開き、はるかの母親が支度したダイニングテーブルへ席を移した。

「おば様、本当にごめんなさい。全て決まるまで、はるかちゃんに会わせる顔が無いと決めていたから。」

「でも、本当に良く頑張ったわね。これでいよいよ準備が整ったのかしら?」

「はい。学校のほうもすべて。」

「あとは、半年後に予定通り進めば・・・ってことになるのね?」

「はい。」

「はるかも、きっとあなたの様にしたでしょうね。」

「絶対にそうしたと思います。小学校の頃から、はるかちゃんが私に教えてくれたことでしたから。」

「でも、半年先のことはあなたが自分で考え出したことよ。絶対に成功させてね。」

「はい!」

そう言うと、再び恭子ははるかの遺影のそばへ行って正座し、一息おいて言った。

「人類初・・・だったよね。」

笑顔のはるかが恭子を見つめている。

「行って来ます。はるかちゃん。」

そう言って、再び恭子は祈りを捧げた。



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posted by 北乃 道晴 at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 034.旅立ち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

34.旅立ち(2)

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4月上旬。岡山で今シーズン初戦を迎えた西地区の全日本レースで、中学2年になった顕児はKF2クラスでポールポジションからぶっちぎりの優勝を決めた。

高校1年になった道下のKF1ステップアップ、中学3年のデラクルードのエンジン不調も重なり有利だったことは確かだが、昨年度よりも格段に速さが進化していた。

KF1のエントラントからも、いきなり要注意ドライバーとして注目を集める存在になった。

デラクルードが久しぶりに顕児の顔を見たとき、あまりにストイックな表情に変わっていた顕児の顔に恐怖感を覚えた。

道下もデラクルードと同様だった。

メールを送って来た時に文面から読み取った顕児の決意は、彼らの想像を超えていたということになる。

もちろん誰も相手にすることは無かったが、顕児は時間が出来ると数多くのモータースポーツ関連企業へ自分を売り込むレポートを送るようになっていた。

『今は誰も相手にしてくれなくていい。でも数年後に、他の奴より覚えてもらい易くなっていれば充分だ!』

そして、そのレポートを纏め上げるためにも絶対に結果が必要だった。

もちろん、恭子を打ち負かすためには一寸たりとも妥協は許されないことも痛いほど感じていた。



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posted by 北乃 道晴 at 22:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 034.旅立ち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

34.旅立ち(3)

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中学生活でも、顕児は授業に対する取り組み方が変わった。

顕児には勉強時間は授業中しか確保できない。

だから、授業中に全て理解するしかない。

教師の説明を2割聞きながら、残りの8割は勝手に教科書を読み進めて授業時間の密度を高めて行った。

特に英語に関しては恭子との約束を守るために、時間さえあればMP3レコーダーで英会話を聞き続けるようになった。

『聞いてりゃ丸ごと覚えられるさ!』顕児らしい、単純発想だった。

実際に、発音からスペルを連想するのは容易だ。結果的にこの取り組みが、顕児の英語力を学年トップに押し上げて行くことになった。

ともかく岡山から戻って一週間後となる土日の練習走行で、第1戦で失敗した課題を孝雄と再確認しながら、顕児は徹底的にアタコ・サーキットで走り込んだ。

日曜の練習を終えて、角谷と自宅に戻ってきた顕児は、ようやく自室でほんの僅かなリセット時間を過ごしていた。

正直に言って、ひどく疲れていた。

これからレポートを纏めなければならない。

が、その前にもう1つどうしても必要なものがあると判っていた。

『恭子の声が聞きたい。』

夜7時半。

まだ携帯電話を持たせてもらえない顕児は、躊躇しながらも玄関先で受話器を取り上げて恭子の家に「恭子さんとお話したいのですが・・・。」と電話をかけた。

「え・・・。顕児君、恭子から何も聞いてないの?」呆れたと言わんばかりに驚いた声で、恭子の母親が行った。

「恭子、4月からロンドンに居るのよ。」

顕児は全身に熱いものが広がるのを感じながら、恭子の母親の説明を聞き続けていた。



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posted by 北乃 道晴 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 034.旅立ち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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