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2009年05月23日

31.ブレークスルー(1)

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全日本を翌週に控えた土曜日、顕児ら丸山自動車のメンバーはいつものとおりアタコ・サーキットでの練習走行を行っていた。

しかし、顕児と孝雄の力の入れようはもの凄かった。

顕児の父親でもあり、孝雄の大先輩でもある角谷ですら声をかけ難い雰囲気を2人は醸し出していた。

ピットに戻ってきた顕児はマシンから降りることなく、近寄ってきた孝雄にすぐ確認している。

「今よりもっとコースから飛び出すくらいまで、ブレーキングを遅らせてみて。」孝雄のアドバイスに、

「まだ甘い!?」

と、顕児が確認する。

「うん、あれじゃ、まだ浅すぎ。」

「わかった!」

すかさず顕児はカートから飛び降り、押しがけでエンジンを再始動して、再びカートに飛び乗って行く。

ようやく昼を迎え、サーキット全体がひと時の静寂を取り戻した。

「おーい、メシ食わんのかぁ?」角谷が呼んだ。

角谷たちはピット裏の駐車場の片隅でカレーを作って食べている。

が、顕児と孝雄は午前中のラップタイムが記されたリストを一行づつ、細かくチェックし続けていた。



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posted by 北乃 道晴 at 17:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 031.ブレークスルー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

31.ブレークスルー(2)

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「あ、すぐ行くから!」顕児がリストから目を離す時間も惜しそうに、大きな声で答えた。

「56周目、58周目、・・・」顕児がリストを読みあげる横で、孝雄はノートパソコンで走行データをグラフ表示させて次々と見比べていく。

「うん。最低でもこのくらい直線を意識していないとダメなのかもしれないよ。」

孝雄が続けて説明する。

「ここの区間タイムだけは確実に速くなってきているよ。」

孝雄がグラフ上で指差したところを、顕児も覗き込む。

「これをさ、ラップタイム全体に反映するにはどうすれば良いと思う?」孝雄が顕児に向かって質問した。

「ブレーキと加速の間の時間をどんどん削るってことか・・・。」

ようやく答えに辿り着いたと言わんばかりの表情で、顕児は孝雄の顔を見た。

「そうだよ!宮城さんや恭子ちゃんのあの走り方はその為のものだったんだよ!」孝雄も、答えが判ってすっきりした!という表情で顕児を見た。

「くそっ!今まで何を見てたんだ、俺は!」顕児が自分に向けて怒鳴った。

「まだ間に合うって、顕児。走り方はコピーできているんだ。あとはブレーキングの頂点をどこまで高められるかだけ考えればいい!」

「孝雄さん、今日、マシン潰しても来週まで直せる?」

「ああ、捨てる直前のフレームとエンジンなら山ほどあるからな。」大笑いして孝雄が答えた。

顕児が今使っている全日本用のマシンも、森本や丸山自動車のメンバーが提供してくれる中古品の寄せ集めで作ったものだ。

「限界点を何度飛び超えてようと、最後には絶対結果を出してやる!」

「よし、目いっぱいやってやれ!」

顕児と孝雄は午後の練習再開が待ち遠しくなって時計を確認した。

「おーい、カレーは・・・?」角谷は、そんな2人に、さっきより小さい声で呼んだ。



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posted by 北乃 道晴 at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 031.ブレークスルー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

31.ブレークスルー(3)

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群馬県の秦呂サーキットで行われる全日本カート第5戦、顕児にとっての第3戦は、近年稀に見るスリリングなレースとなった。

タイムトライアル、予選と、KF2クラスでは中学3年の道下が相変わらずの好調を維持してポールポジションを獲得した。

予選2位は、20歳からカートを初めて今年で28歳になる、KF2クラス2年目の安西という選手が獲得。安西は優勝経験こそ無いものの、安定感の高さに定評がある。

そして、顕児が予選3位を獲得した。

中学2年のデラクルードも顕児から0.01秒遅れとなったが、前回のレースより上の4位に追い上げて来ている。

5位以下も、上位常連組の若手選手−とは言っても、16〜20歳の選手が大半だが−が僅かなタイム差で予選を通過した。

「とうとう上がってきたか、角谷・・・。」道下は、予選結果を見ながら今まで以上に厳しい決勝になると悟った。

デラクルードも、KF2にステップアップしてから今回初めて顕児に抜かれたということに、強い焦りを感じずには居られなかった。

「何とか間に合ったのかな〜。」ピットで孝雄が顕児をねぎらった。

「いや、まだ行ける筈です。コースアウトが怖くて、甘い攻めしか出来なかったポイントが結構ありました。」と、顕児はもう1つ吹っ切れていない様子だった。

「コースアウトか・・・。」

「ええ、でもそんなこと言ってられないですよね。」

汗を拭きながら、顕児はスタンドに載せたマシンを見下ろす。

「コースアウトしてあとで恭子ちゃんに笑ってもらうつもりで、どんどん攻めて来いよ。決勝は。」孝雄が笑うと、

「うん、そのつもりで行きますよ!」と顕児も笑った。



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posted by 北乃 道晴 at 20:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 031.ブレークスルー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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