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2009年05月21日

29.デート(1)

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暑い夏本番を控えた6月。

白鳥家に、角谷、孝雄、森本が訪れていた。

恭子の両親と向き合ってテーブルを挟み、皆、難しい顔をしていた。
沈黙の時間が続いた。

「やはり、仕方ないですね・・・。」角谷がポツリと言った。

「本人が一番辛い思いをしているでしょうしね・・・。」森本も言った。

再び沈黙が始まる。

が、「今年は恭子ちゃんに活動休止してもらいましょう。」と、角谷がきっぱり言った。

孝雄がうなだれた。

先週のレースでいつものように、恭子が表彰台の頂上に立った時、それは起こった。

突然、恭子が倒れたのだ。

2位で横に立っていた顕児がとっさに恭子を抱きかかえたため、転落することは避けられた。

が、すぐに病院に担ぎ込まれて、心臓に負担が掛かっていることがはっきりした。

受験勉強による慢性的な睡眠不足と、週末のカート活動が恭子の中で疲労として蓄積していたのだ。

恭子は地元の橘女子中学校への進学を決意した。

はるかが一緒に行こうと恭子を誘っていた学校だった。地元唯一の女子中学校ということもあり、受験倍率も高く、これまで目立たない成績だった恭子には難関中の難関だ。

「恭子ちゃんなら、1年くらいのブランクなんてすぐに取り戻せるから心配ないよ。」森本が自分に言い聞かせるように口にした。

「夢があるって本人も言っていて・・・。」父親が言ったが、その夢が何かは父親も恭子からは聞かされていなかった。

そこへ恭子がやってきた。

母親が、これまで大人だけで話していた結果を恭子に告げる。

「今年はカートを休止しましょう。ね。」

恭子は涙を流したが、何も言わず素直に頷いた。

「たった1年だ。受験、頑張れよ。」角谷が恭子に言った。



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posted by 北乃 道晴 at 08:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 029.デート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

29.デート(2)

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小学生としてエントリーする最後のその年、顕児は1つ上のクラスにステップアップしてアタコのシリーズチャンピオンとなり、『東西ジュニア決定戦』のAクラスでもチャンピオンを獲得した。

道下、デラクルード、その他の強豪を抑えての堂々優勝だった。

が、顕児、道下、デラクルードだけでなく、竹田やその他、恭子に注目していた者達に、恭子の不参加は大きな物足りなさを残した。

『本当はこんなもんじゃないはずだ・・・。』顕児が一番悔しかった。

アタコのコースレコードも顕児が辛うじて塗り替えていた。

が、顕児は『恭子に勝てた』とは全く思っていなかった。

「華が無くなった・・・。」と孝雄たちが時々笑うが、あの静かな恭子が居なくなっただけで『これほどむさ苦しくなるものなのか・・・。』と、丸山自動車のメンバー全員が思っていた。

6年生になってから、顕児と恭子は学校のクラスも別になってしまい、2人ともほとんど顔を合わせる機会も無くなっていた。

また、角谷から顕児は、恭子の受験勉強の妨げにならないよう、カートのことを思い出させるなと釘を刺されていた。

これまでも顕児が恭子に用があるとすれば、カートに関わることしかなかった。

が、冬を迎えたある金曜日、顕児は恭子のクラスに入って行った。

恭子は休み時間中も1人きりで、なにやらノートに書き写していた。

「おう、ガリ勉。」今頃の子供が使わないような言葉で、顕児が恭子に話しかけた。

「あ、顕児君!」机の目の前に立つ顕児を見て、恭子が顔を上げた。

顕児が全日本で優勝したことも、角谷が恭子の両親に伝えただけで、恭子は顕児本人から聞くチャンスが無かった。

しかも顕児はいつも、恭子の視界に入らないようにずうっと離れたところに居るようにしていた。

「おめでと!道下さんやデラクルードさんも頑張ったみたいね!」恭子が楽しそうに顕児に話しかけ始めた。

カートの話がしたくてたまらなかったのだ。

しかし、恭子のその言葉を聞かなかったかのように、顕児が恭子の目を見つめて言った。

「なあ、明日デートしないか?」



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posted by 北乃 道晴 at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 029.デート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

29.デート(3)

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自宅に帰った恭子は、何ヶ月かぶりに、勉強も、もちろんカートのこともそっちのけで、母親のドレッサーの前で何度も何度も服を選んでいた。

それを母親も嬉しそうに手伝っていた。

「寒いからねぇ。あんまり露出で迫るのは無理よねぇ。」母親が言った。

「露出!?ど、どうしてそういう話になっちゃうの?恥ずかしいから嫌だよ!」焦って恭子が拒絶する。

「でも可愛い系はつまらないわよ。せっかくなんだし。」

そう言いながら母親は、

「やっぱり黒でまとめましょ!白もアクセントに入れてね。」

「えー、ピンクじゃダメ?」

「あんたの場合は、子供っぽくしか見えなくなっちゃうわ。」

「ママがデートするんじゃないのよ!」

恭子がデートを本当に楽しみにしているのが、母親にも手に取るように判った。

「顕児君もやるわねぇ。潮田アクアスタジアムへ行くなんて。自分で考えたのかしら?」感心したように母親が言う。

「ねぇ、バッグと靴も決めなきゃ!」

顕児が誘った潮田アクアスタジアムは電車で2時間ほどのところにある、地元でもデートスポットとして有名な水族館だ。

小学6年生が2人で行くにはちょっとした冒険だ。

恭子も随分以前に家族と車で行ったことがあるだけだ。

が、顕児が「俺に付いて来れば良いから。」と言ってくれた。



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posted by 北乃 道晴 at 15:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 029.デート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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