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2009年05月20日

28.イーブン(1)

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アタコサーキットの駐車場で、恭子は初めてその光景を見た。

ワンボックス・カーからスポーツタイプの車椅子に乗り移って降りてくる人が何人もいる。

その横で、カートも何台も運び出されていた。

「田原サーキットで走っているって聞いてはいたけど、俺も始めて見るなぁ。」孝雄が、車椅子の人たちを見て言った。

恭子と顕児がいつものように1回目の練習走行を終えてピットに戻ってきた。

恭子は、気になっていた車椅子のチームはどこに居るのかなぁと、辺りを見回したが見当たらない。

「恭子ちゃん、どーだった?あの車椅子のチームの走り。」孝雄がピンクのマシンをスタンドに載せるときに、真向かいでカートを持ち上げている恭子に話しかけた。

「え?」

「ほら、まだ走ってるでしょ。」

「え?どこ?」

恭子は遅いカートが増えると思っていたので、どのカートがそうなのか全く見分けがつかなかった。

「あの紫のマシンがエース・ドライバーの高校生だそうだよ。」

「え、えーっ?」

とうてい信じられなかった。

恭子も顕児も、1回目の20周で周回遅れに出来ないカートが居ることに気づいていた。

それがあの紫のマシンだった。

タイムは顕児のタイムとほとんど違わない。辛うじて顕児が0.3秒くらい早いラップタイムを数回出せていた程度の差だ。

孝雄と恭子の横で2人の会話を聞いていた顕児の目も、その紫のマシンに釘付けになった。

『まじかよ・・・。』



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posted by 北乃 道晴 at 15:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 028.イーブン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

28.イーブン(2)

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数回の練習走行を終え、丸山自動車のメンバー全員で昼食の準備を始めた頃だった。

「白鳥恭子さんか角谷顕児さんって方、いらっしゃいますか?」と呼ぶ声がした。

2人がその声の方向へ振り向くと、車椅子の少年がピットに入って来た。

「はじめまして、石館といいます。カートマガジンを見て、一度会って見たくなってー。」とにこやかに言った。

「こ、こちらこそー」続けて『はじめまして』と恭子が言いかけたとき、顕児が

「角谷です。」とさえぎるように答えた。

『本当に小さいな、2人とも・・・。』驚きながら石館は、

「カートマガジンで特集されていた走り方、凄く参考になったよ。」と、2人に語りかけた。

石館は高校2年生。カート歴は5年だという。

「君も速いよ。ここに来たばかりでいきなりあのタイムで走れる人なんて、めったに居ないよ。」孝雄も興味を惹かれるように近寄ってきた。

「いいえ、エンジンが125ccのものを使ってるんです。」石館が答えた。

恭子や顕児たちのクラスでは排気量が100ccのエンジンを使っている。

「ストレートではピンクと青のカートに追い付けそうだったんですが、コーナーでは全く相手にしてもらえませんでした。」と石館は愉快そうに笑った。

「でも体力的に不利に見える白鳥さんたちが、あんな信じられないスピードで走っているのを目の当たりにさせてもらって、今後の目標に出来そうですよ。」



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posted by 北乃 道晴 at 17:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 028.イーブン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

28.イーブン(3)

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石館が言うには、メンバー同士での競争は別として、一般ドライバーとのバトルでどうしても自信を持てない雰囲気をチーム内から払拭できないというのだ。

「本来ならエンジンも100ccに戻して、一般のレースにエントリーしたいんですが。」

「でも操作方法が違うと、どうなんだろうね?」と、孝雄が恭子と顕児を見た。

「俺、乗ってみたいな。」

「私も。」

顕児と恭子が興味しんしんに答えた。

「ぜひ乗って見せてもらえませんか?タイムとかは別として、何か参考になる意見を貰えるだけでもあり難いです。」石館が喜んで答えた。

「じゃ、乗り方のレクチャーから始めてもらうことにしようよ。」孝雄が恭子と顕児に言った。

昼食をそそくさと済ませると、3人は石館の居るピットに行き、チームメンバーたちと挨拶を済ませてから、チーム監督の大友から操縦方法のレクチャーを受けた。

「何せ、どれもこれも自己流で手探りでやってまして。」大友が説明を始めた。

「構造は簡単です。スロットルとブレーキが、こことここ。ステアリングを持ったまま、左右の手で操作できるようになっています。」

確かにステアリング周辺の構造が違う。

恭子と顕児が早速マシンに乗り込むと、

「セッティングとか体のサイズにシート調整しないで大丈夫?」と、大友が尋ねた。

恭子も顕児もヘルメットを被った頭で頷く。

押しがけが出来ないので遠心クラッチ方式になっていて、マシンが止まったままエンジンが始動された。



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posted by 北乃 道晴 at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 028.イーブン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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