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2009年05月12日

21.ウェット(1)

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恭子にとって3回目のレースが始まろうとしている。

が、丸山自動車のメンバーは恭子を見ながら困った顔をしていた。

「こんなに急に来るとはなぁ・・・。」

雨のことだった。

出掛けに見た天気予報では「今晩から・・・」とテレビで伝えていた大雨が、もう降っているのだ。

予選セッションまでは全く降っておらず、恭子と顕児はぶっちぎりで1位、2位を獲得していた。

が、その直後からいきなり土砂降りになった。

「顕児はまだしも、恭子ちゃんは雨の日に走ったことが無かったな・・・。」孝雄が呟く。

実はこのレースで恭子が優勝すると、恭子が地区チャンピオンに決定し、来月行われる鈴馬サーキットでの『東西ジュニア決定戦』に出場できることになっていた。

恭子にはそのことをまだ誰も伝えていなかったが、大人たちは大いに期待を寄せていたわけだ。

今までの丸山自動車チームでは考えたことも無かった、ビッグチャンスだった。

『東西ジュニア決定戦』は年1回、秋に全国各地のシリーズチャンピオンを集めて開催されるビッグイベントだ。

小学生クラスとは言え、モータースポーツの頂点を目指す子供たちにとっては大きな登竜門になっていて、これまでにも有名なレーシングドライバーを輩出している。

「一度も経験無しで、ぶっつけ本番か・・・。」森本も主催者ながら心配になって様子を見に来ていた。



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posted by 北乃 道晴 at 20:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 021.ウェット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

21.ウェット(2)

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「雨、凄いね。」恭子が話しかける横で、顕児は『今日の雨は俺にとってチャンスだよな。』と思っていた。

「パンツとか・・・着替え持ってきてる?」小さな声で恭子が聞いた。

「ぱ、パンツぅ?」予想外の話題に、いきなり顔を赤くして顕児が後ろに引いた。

「ほ、ほっときゃ帰りの車の中で乾くだろ・・・!」

「それしかないかなぁ・・・。」

『パンツのこと心配してたのかよ・・・。』と呆れながら、暫くして『恭子のパンツはどんなのだろう?』と思わず顕児は想像して再び顔を赤くしていた。

ローリングスタートが始まった。

大人たちの雨の予選では、コースアウトの続発で大荒れだった。

そのせいもあり、恭子たちの雨の決勝レースにも注目が集まっていた。

雨の量は予想以上に多く、このローリング中にも2台のカートがスピンしてコースアウトした。

4周ほど隊列が整うのを待って、スタートの日章旗が振られた。

ピンクのマシンを先頭に、弩音を立てる集団が1コーナーへ突入していく。

いきなり3台のカートが接触してコースアウト。両手を挙げて止まっている。

スタート直後にホームストレートに舞い上がった水煙の向こうに、ピンク色のマシンが先頭でヘアピンに侵入する様子が辛うじてピットから見えた。

「よしっ、上手くスタートできた!」孝雄が、ガッツポーズしながら叫んだ。



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posted by 北乃 道晴 at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 021.ウェット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月13日

21.ウェット(3)

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顕児の青のマシンは恭子の後ろに付いていて、1つ目の複合コーナーへ飛び込んで行く。

『まだ差が開かない!このままなら行ける!』顕児は、恭子のペースがいつものように上がっていないのを確認して、チャンスが来ていると感じた。

最終コーナーを、ピンク、青の2台のカートが3位以下を大きく引き離して立ち上がってくる。

「おい、おい、また丸山さんところのチームかぁ!?」

「ここのところ連勝続きだからなぁ。」

他チームからの声が聞こえてくる。

ホームストレートの水しぶきの中、『一度1コーナーで、つついてみるか!』と顕児は決意した。

アクセルオフと同時にコーナーへステアリングを「クッ」と小さく切り込み、再び直進に戻しながらアクセルを踏み込む。

その瞬間、ピンクのマシンが顕児の目の前で腹を見せた。

『え!?』

恭子のマシンが転倒すると感じた、強い横への力を受けながらコーナーを加速中の顕児には避けようが無い。

顕児のマシンは恭子譲りの走法で、ロケットのように加速を続けていく。

『ぶつかるっ!』と、思った時だった。

恭子のマシンがどんどんコーナーの内側へ吸い寄せられていく。

それを見た顕児だが、顕児のマシンは強い横Gのために、どんなに頑張っても今以上に左へ寄せて行くことが出来ない。

1コーナーを立ち上がったとき、恭子からカート2台分も離されたことに、顕児は初めて気付いた。



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posted by 北乃 道晴 at 08:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 021.ウェット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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