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2009年05月08日

18.意識(1)

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体育の時間、相変わらず恭子はステージの下で体育座りをして、他の生徒の様子を眺めていた。

今日の授業は跳び箱だ。

5段ですでに勢いが不足し、跳び箱の上に座ってしまう生徒が出始めた。

6段、7段と増えていくに連れて、ロイター板の上で躊躇して止ってしまう生徒も増えてきた。

ここから先は、どれだけの段数を誰が跳躍できるのかに注目が集まってくる。

9段目で女子全員が失敗。

12段で男子も5人に絞られてきた。

その5人の中に顕児もしっかり残っている。

まず14段を、激しい踏み切り音とともに顕児が一発で跳躍に成功した。

他の男子も、1人が2回目で成功、1人が3回目で辛うじて成功。

もう3人しか残っていない。

15段。

もはや大きな壁−いや、建物のような塊がそびえ立っている。

最初に顕児が跳び箱に向かって走り出した。

「バンッ!」

顕児の体が浮き上がったとたん、「ドスッ」と手を付く音がした。

それからゆっくりとした動きで放物線の軌跡を描きながら、「ドン!」と音を立ててマットの上にしっかりと着地していた。

「おほーっ!」

「いったぁ!」

周りで座って見ていた生徒から歓声が上がる。

『凄いな、本当に。』と恭子も思った。



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posted by 北乃 道晴 at 17:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 018.意識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

18.意識(2)

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顕児の表情も真剣な目つきに変わっている。

次の男子2人は2度連続で失敗。

最後の3度目のチャレンジを始める。

「ドン」

「ダン!」

一人目はロイター板を踏み切った直後に、壁のような跳び箱の前面に両手を付いてストップした。

「きびしぃなぁ・・・」

周りからヒソヒソと声が聞こえる。

最後の1人がスタート。

だが、ロイター板まで全力で走ったものの「やっぱだめ・・・」と叫びつつ、跳び箱の横を走り抜けていった。

「どーする?記録に挑戦してみるか?」担任の高井が顕児に声をかけた。

その時、顕児は恭子の方を見た。

この2年余り、恭子が経験したことのない顕児の仕草に、恭子は身動き1つ出来なかった。

「17段!」顕児が高井に向かって言った。

学校にある全ての台を積み重ねるという意味だ。

4年生でこの高さに挑戦するのは、ここ数年でも高井の記憶にはなかった。

生徒たちがどよめく中、17段の跳び箱が組みあがった。

さすがに高い。

生徒たちも、この高さには感嘆の声を上げていた。

恭子も、顕児の身長をはるかに上回る高さに『本気なのかな・・・』と考えていた。

「よーし角谷、やってみろ!」高井が顕児に告げた。

その言葉に呼応して、待ってましたとばかりに顕児が走り出した。

歩数を合わせるように最初のスピードは抑え気味だったが、途中から一気に加速してロイター板の上に踏み込んだ。

「バパーンッ!」

今まで聴いたこともないような踏切りの音に続けて顕児が弾ける様に飛び上がる。

「ドンッ」

跳び箱のてっぺんに手を付くが、不十分な高さに見えた。

が、顕児もそれに充分気付いているようだった。

背筋を器用に伸ばしながら跳び箱頂上をすり抜ける。

「ダンッ!」

着地で大きくバランスを崩したが、顕児はそのまま駆け抜けて振り向くように立ち止まった。

『やった!』思わず恭子は声に出さず叫んでいた。

周囲で見ていた生徒も、担任の高井も歓声を上げる。

戻ってきた顕児に、高井は「良く一度で踏み切ったなぁ!」と、うれしそうに顕児の肩を叩いた。

騒ぎの中でほんの一瞬だったが、顕児は恭子の方に振り向き、驚きの笑顔で座っている恭子の顔を確かめてから再び他の生徒の方へ向きなおした。



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posted by 北乃 道晴 at 20:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 018.意識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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