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2009年05月05日

15.ライバル(1)

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小さいながらも、アタコ・サーキットには食堂がある。

1時を回った頃、恭子の両親と丸山自動車の大人たちは、別のテーブルで午前中の子供たちの走りをネタに大騒ぎしていた。

森本は他のチームの代表者たちと受付の方で話をしていた。

気付くと、恭子と顕児は2人で別のテーブルでカレーライスを食べていた。

『何か話した方が良いんだろうな・・・。』恭子は思っていたが、何を話して良いか全く思いつかずに少しずつカレーを食べていた。

だが、顕児は一気にカレーを食べ終えてしまった。

「くすり、持ってきたのか?」突然、顕児が恭子に聞いた。

「あ、うん。」そう恭子が言うと、顕児が突然立ち上がって行ってしまった。

「あ・・・」恭子が声をかける暇も無かった。

一人ぽっちになった恭子は、再びカレーを食べ始める。

すると突然、目の前に水の入ったコップが置かれた。

顕児が戻ってきて、再び椅子に座ったのだ。

「くすり飲むのに使うだろ?」

「あ、ありがと。」

沈黙が再び始まる。

「お前、凄いな・・・。」

唐突な言葉に恭子は驚いた。

「そうなの・・・?」

「ああ、凄いんだよ。天才ってお前みたいなやつのこと言うんだろうな。」

明らかに悔しさを抑えながら、顕児が話しかけているのが判る。

「午後もまだ走れそうか?」

「わき腹は痛くないけど、首が思うように動かなくなってきたかも・・・。」

「そういや、コーナーで首が反対に倒されてたな。」

「うん、力入れても全然動かなくって。」

「じゃ、無理するな。」

「もう少し休んで様子見る。」

「先行って俺、また走ってるから。」

そう言うと、顕児は軽く手を振って食堂を出て行った。

今までの顕児とは全く別人に見えた。

真向かいに向かって、恭子のことを素直に聞いてくれるなんて思いもしなかった。

急にカレーが美味しく感じるようになった。



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posted by 北乃 道晴 at 10:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 015.ライバル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

15.ライバル(2)

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3時。

恭子はピット沿いのガードレールにもたれて、コース上のオレンジのウェアをずうっと見つめていた。

タイムは45秒台前半。

恭子のタイムの2秒落ちあたりで頭打ちになっている。

それでも、現在走っているカートの中ではトップタイムだ。

2位のタイムを出しているのは、別のチームのカートらしい。孝雄から聞いた。

ちなみに6位のタイムを顕児の父親、角谷がキープしている。気が付けば顕児から0.5秒落ち。

前回の練習を最後に、とうとう息子に負かされていた。

ピットに戻ってくるなり、角谷は「駄目だ、もう追いつけない!」と悔しそうだが、大きな笑顔で孝雄に言った。

すでに恭子の両親はサーキットを離れ、了祐の迎えに向かっていた。

昼食後から恭子は顕児の複合コーナーの走り方ばかりを気にして見ていた。

「あのコーナーをスムーズに通過するのが難しいんだよね。」孝雄が後ろから声をかけてきた。

「顕児は細かいコーナーがどうしても苦手みたいなんだ。」

タイヤ滑っちゃってますよね。」

「恭子ちゃんも滑ってたよ。まあ、顕児とは違う感じがしたけど。」

「車が跳ね返る時には滑りますよね、やっぱり。」

「クルマが跳ね返る?」

「顕児君は跳ね返って欲しいところが全部すっぽ抜けちゃってるみたいに見えるんです。」

恭子の言葉にピンと来ない孝雄は、再び顕児のほうを見続けた。

「孝雄さん、私もう一回走っても良いですか?」

「あ、ああ。好きなだけ走って良いんだよ。」

「じゃ、もう一回お願いします。たぶん10周くらいでもう首が動かせなくなっちゃうと思うけど。」



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posted by 北乃 道晴 at 12:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 015.ライバル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

15.ライバル(3)

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再びウェアとヘルメットに身を包み、カートに乗り込む恭子。

顕児のように『押しがけ』でエンジンを始動できないため、孝雄に押し出してもらう。

「ビッ、ビッ、・・・、ビビビビィィィィイ!」

左手を上げながらコースインする恭子。

しばらくペースを落として、時おり後ろの様子を見ている。

オレンジのウェアが近付いてきた。

と、同時に恭子も一気にトップスピードへ加速を始める。

顕児も恭子が目の前を走っているのに気が付いた。

2つ目の複合コーナーに恭子が飛び込む。続けて顕児も飛び込んでいく。

顕児が複合コーナーから立ち上がったとき、恭子は最終コーナーを飛び出していくところだった。

「何で一瞬でこれだけ離されるんだ!?」

が、恭子はホームストレートでスピードを落とし再び顕児が負い付くのを待つ。

「あ、恭子ちゃん、顕児に何か教えようとしてるみたいだ。」孝雄がぼそっと呟く。

角谷もその言葉に吊られて、恭子と顕児の走りに注目した。

1コーナーなどの大きなコーナーでも、確実に顕児は恭子から引き離されるが、複合コーナーでの遅れは極端に大きい。

顕児も恭子と同じスピードで何度もコーナーに飛び込むが、何かが違うことはすぐに思い知らされた。

『何だ・・・?』

顕児が違和感を感じ始めたことがある。

複合コーナーの入り口までは同じスピードで進入するのに、複合1つ目のコーナーの立ち上がりですでに引き離され始める。

『もしかしたら?』

次の複合コーナーが迫ってきた。

「行っけぇ!」

恭子と同じスピードで顕児も飛び込む。

『ここでブレーキは使わない!』

複合1つ目のコーナーの立ち上がりで恭子に付いて行けている!

が、その直後に恭子のカートは180度近く反転してロケットのように視界から消えた。

と同時に顕児はコースから真っ直ぐ飛び出し、宙を舞った。



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posted by 北乃 道晴 at 15:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 015.ライバル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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