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2009年05月01日

13.インビテーション(1)

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「恭子!ちょっと降りて来てくれ!」

ここ数日、恭子はソファーから起き上がり、自分の部屋で夏休みの宿題を進められるほどまでに体調が安定していた。

「はーい!」

お盆休みに入り、父親もここ数日はのんびりと自宅で過ごしていた。

階段を下りて玄関まで来ると、いつもより多く靴が並んでいた。

『誰か来てるの?』

そう察しながら、開け放したままの居間の入口に吸い込まれていった。

居間に入ったと同時に、床に座った父親以外に大人の男が2人ソファーに座っているのに気が付いた。

その内の1人には見覚えがあった。

「突然ごめんね、恭子ちゃん。」そう話しかけたのは、アタコの森でバーベキューをした時にカートの乗り方を教えてくれた孝雄だった。

「あ、こんにちは。えっと・・・」

「たかおでいいよ、恭子ちゃん」と孝雄が笑って答えた。

「はい、孝雄さん。」

「えぇ!この子?孝ちゃん?」もう1人いた、恰幅の良い年配の男が驚いて孝雄を見る。

「ええそうですよ、森本さん。」自信たっぷりに孝雄が恭子の顔を見ている。

「まあ、こっち来て座りなさい。」父親が恭子を自分の傍に呼ぶ。

いったい何事かと思いながら、恭子が父親の横に正座した。


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posted by 北乃 道晴 at 19:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 013.インビテーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月02日

13.インビテーション(2)

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「恭子、こないだ顕児君とバーベキューに行ったときにゴーカートに乗ったんだって?」

「うん・・・。ちょっと、面白くてつい長く乗っちゃったんだけど・・・。」

『ゴーカート壊しちゃったのかな・・・私。』

「心臓はどうだった?」と聞く父親。

「え、心臓?」

そういえばほとんど気にしていなかった。

「う、うん。たぶん全然なんでもなかったと思う。覚えてないんだけど・・・。」

恭子の返事を聞いて、父親は驚いた顔をした。

「先ほど、80キロ以上はスピードが出るとおっしゃってましたよね?」父親は孝雄に向かって尋ねた。

「ええ、あれほどのラップタイムですから、間違いなくそれ以上は出てたはずです。」孝雄が真剣に答える。

「モータースポーツって、脈数が普段の生活の2倍以上に高くなると聞いているのですが。」父親が再び尋ねた。

「私も、そう聞いたことがあります。」孝雄が答え、オーナーと呼ばれた男も頷いた。

「スキーみたいに全身の筋肉を動かさなければ、恭子の心臓は平気なのかな・・・。」まるで理解できないような顔をして恭子の父親が恭子の顔を見た。

「あんまり難しく考えなくても良いんじゃないの?パパ。」お茶の用意をしてキッチンから母親が出てきた。

「まあ、そうなんだけどねぇ。」父親が悩ましそうに答える。

おもむろにオーナーと呼ばれた男が話し始めた。

「白鳥恭子ちゃん・・・ですね?始めまして、アタコ・サーキットの森本と言います。」その男が恭子に向かって頭を下げると、恭子も慌てて「はじめまして。」と丁寧に挨拶をした。

「失礼ながら、あのタイムを出したと思えないような可愛らしい・・・というか、本当に素敵なお嬢様ですね。」森本は言った。

こんな華奢な子供が・・・という本音が森本の発言に含まれていたことは、恭子以外の大人たちにも伝わった。

「あのタイムは、私どものコースでジュニアカート選手権の東エリアでトップ3にランキングしている中学生が記録したコースレコードより速いんですよ。」

その長ったらしい言葉をすぐに理解できた者は、白鳥家には誰もいなかった。

それがどれだけ凄いのか。いや、そこそこのレベルなのか?ということすらも。


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posted by 北乃 道晴 at 00:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 013.インビテーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

13.インビテーション(3)

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「恭子ちゃん、またカート乗ってみたくないかい?」直球で森本が尋ねる。

見知らぬ大人に突然問われた質問に、どう答えたらよいか判らず、思わず父親の顔を見る。

「自分の気持ちで答えていいよ。」父親が優しく恭子に言った。

少し時間がかかったが、「乗りたいです。」と恭子が答えた。

その返事を聞いてすぐ、「白鳥さん」と、孝雄が切り出した。

「これを見て頂けますか。」

A4サイズの紙一枚にびっしりと表が書かれ、何やらたくさんの文字と数字が書き込まれているのを恭子も見た。

「今年はこの2/3で済むと思いますが、恭子ちゃんがレーシングカートを走らせるのに必要な項目と費用をまとめたものです。」

父親がその表の一番下に記された『合計』欄を見て、厳しい表情をしたのを恭子も気付いた。

「こちらの予算は全て新品、定価で用意した場合です。で、その隣が今回僕の方で提案する予算です。白鳥さんに用意して頂くのはその内の、こちらの予算になります。」

孝雄が最後に指差した金額を見ると、父親は再び平静の表情に戻った。

「森本さんも、もちろん僕も、正直に言ってお金を出せるほどの余裕はありません。」

「ですが、中古の部品ならほとんど無料で手に入れることが出来ます。」孝雄が説明する。

「もちろん新品である方が良い部品についても、可能な限りこちらで提供できるように協力させて頂こうとは思っています。」森本も続けて言った。

「具体的には、交通費、宿泊費、ああ、ウェアやヘルメット、タイヤ、燃料代、・・・、」と恭子の父親が表を見ながら、自分たちで用意しなければならないと示された項目を読んでいる。

恭子にはまだ、さっぱり状況が飲み込めない。が、自分がカートを走らせるのに必要なお金が随分かかると言う話題になっているとうすうす感じていた。


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posted by 北乃 道晴 at 10:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 013.インビテーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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