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2009年04月21日

8.怪我(1)

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恭子とはるかは教室の一番後ろの席に並んで座っていた。

教室は休み時間で賑やかだ。

だが、2人は他の生徒と話をすることも無く、静かに2人きりで何かを話していた。

「次は国語だったよね?」

恭子がはるかが頷くのを見て、国語の教科書を机の上に置いた瞬間だった。

恭子が宙に浮いた。

『!?』

次の瞬間、恭子の腰と背中、そして後頭部に激痛が走った。

薄れていく視界の中で、椅子を掴んで恭子の周りに立ち並ぶ顕児たちがぼんやりと見えた。

そして、「恭子ちゃん!」と叫ぶはるかの声もどんどん遠くなって行った。

気が付いたとき、恭子は柔らかな床の上に横たわっていた。

「恭子ちゃん!わかる!?」

涙を流しながら、はるかの顔がくっ付きそうなくらいの近さから覗き込んでいた。

「あ・・・」と恭子が言いかけたとき、「保健室だよ、恭子ちゃん!」

「おお、白鳥!良かったぁ。」と担任の高井も覗き込んでくる。

「高井先生、救急車が来ましたよ!」保健の先生が廊下から駆け込んできた。

「今、気が付いたところです。」高井が答える。

「さ、とにかく病院へ行こう。」

「え?」

それだけ言うのが精一杯の恭子。

突然、後頭部とお尻の付け根に激痛が走り、顔をゆがめる。

「お母さんには病院のほうに来てもらうよう連絡してあるから。」

そこへ、救急隊員が入ってくる。

「こちらです、よろしくお願いします!」高井が救急隊員に答えていた。


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posted by 北乃 道晴 at 18:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 008.怪我 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

8.怪我(2)

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地元で一番大きい市立病院。

最近新築されたが、歴史の古い病院だ。

「軽い打撲だけだと思います。ただ、今晩から明日にかけて何か変調があったらすぐに来て下さい。」男の医師が恭子の母親に告げた。

恭子は少し離れた場所で、看護師の女性から頭に包帯を巻いてもらっていた。

「きつすぎない?」看護師の問いに、

「まだ痛いから判りません・・・。」と、恭子が笑って答えた。

父親が弟を連れて車で迎えに来ていた。

車の中だが、家族全員が揃ってとても嬉しく感じた。

自宅に着くと、今日一日のめまぐるしさからようやく開放されたためか、あらためて痛みがあることを思い出した。

しばらくして、担任の高井と数人の大人たちが玄関先に来ている様子が聞こえてきた。

母親と父親が玄関先でなにやら応対していたが、しばらくして部屋に戻ってきた。

「目が良く見えないとか、何かいつもと違うところは無いか?」父親が珍しく真顔で恭子に尋ねた。

「頭のこの辺りと、お尻のこのあたりが痛いだけ。」

恭子はあまり心配をかけまいと、軽快に後頭部とお尻に手を当てて言った。

「食欲ある?」母親が台所から声をかけてきた。

「うん、おなかすいた。」

それきり、今日の出来事については誰も口にすることは無く、いつものとおりの夕食を過ごした。


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posted by 北乃 道晴 at 22:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 008.怪我 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月22日

8.怪我(3)

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教室はいつもと違う憂鬱な空気に包まれていた。

5人の男の子が恭子の席の横、後ろに立ち、一斉に「ごめんなさい!」と深く頭を下げた。

高井は5人の男子にしつこいほど何やら話し続けていた。

ただ、恭子も、隣に座っているはるかも、明らかに空々しい謝罪に困惑し、特に恭子はこれ以上は放っておいて欲しいと思いながら無言で頷いていた。

その日、高井は「他人の痛み」について、丸一日の時間を割いて生徒全員に議論させた。

さすがに包帯姿の恭子にコメントを求めることは無かったが。

また恭子から見て、クラス全体が本当に恭子の痛みを共感しようとしている風にも見えなかった。

自宅へ帰り、いつものようにはるかの家に行くと、しばらくしてはるかの部屋の外から男の声がした。

「お邪魔するよ。」

高井だった。

「え、先生!」

2人は驚いて高井を見上げた。

「白鳥の家に電話したら、ここに居るって教えてくれたんだ。」

そう言いながら、二人があけた空間にどっしりと座った。

「いつも2人で何をしているんだい(笑?」さっそく高井が口を開いた。

ちょうどその時、はるかの母が高井にコーヒーと菓子類を届けてすぐに出て行った。

最初の質問への答えを待たず、高井は「はるかは宇宙飛行士に成りたいって言ってたけど、本格的だなぁ!これ程とは思っていなかったよ。」と、嬉しそうに部屋中を何度も眺めて言った。

「目標があると勇気が湧くよな?はるか」

その言葉に、恭子以外にめったに見せない嬉しそうな笑顔がはるかの顔に現れた。

『ああ、はるかって高井先生のこと好きだって言ってたっけ(笑』胸の奥で、恭子は楽しい気分を味わっていた。

少しだけ静かな時間を隔てて、高いが恭子に向かって言った。

「白鳥は学校に来るのが恐ろしくなかったかい?」

突然、恭子の奥底で何かが緩んだ。

それと同時に、恭子だけでなく、はるかも無言で泣き出してしまった。


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posted by 北乃 道晴 at 13:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 008.怪我 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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