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2009年04月19日

5.高井先生

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「ちょっと頭の体操してみよう。」

突然、担任の高井康介が算数の授業も半ばを過ぎたところで言い出した。

まだ20代半ばで、教育の魅力に迷いも感じていない、見た目も声も心地よい若者だ。

生徒たちは何が始まるのか?と興味と戸惑いを感じながら高井の顔を見上げる。

「お金持ちの女性が宝石店へ来て、『昨日買ったこの指輪はやっぱり気に入らないわ。あそこに展示してある指輪に交換してちょうだい。』と言いました。

店の店主は『かしこまりました』とお金持ちの女性が指差した指輪を持って来ました。『じゃ、これは返すわね。』とお金持ちの女性は昨日1万ドルで買った指輪を店主に返し、店主が持ってきた2万ドルの指輪を受け取って店を出ようとしました。

『お客様、あと1万ドル頂きませんと困ります。』慌てて店主がお金持ちの女性を呼び止めます。

すると『何言ってるの?昨日1万ドルをあなたに渡して、今さらに1万ドルの指輪を渡したのよ。』
『合計で2万ドル、きっちり渡したでしょ!』と叫びました。」

「はい、今から10数えるうちに、店主が正しいと思う人は手を挙げて。手を上げなかった人は全員お金持ちの女性が正しいと言うことにします。」

長いようで短い10秒。

「いーち、にー、さーん、」

一瞬教室に緊張が走る。

その中で瞬間的に手を上げたのがはるかだった。

隣近所の友達同士で相談しようにも充分な時間も無い。

ほとんどの生徒がざわつきながらパニックに陥っていたが、恭子をはじめはるかの自信に満ちた挙手に吊られた10名程度の生徒が手を上げた。

「はい、そのまま!」

高井が、嬉しそうに大笑いした。

「これが算数を勉強する理由だよ。」

きょとんとする生徒たち。

「教科書に書いてあることを覚えることも大切だけど、その目的は君たちが店主と同じ立場になったときに困らないようになることなんだ。」

何のことやらさっぱりの恭子。

だが、高井ははるかを見ながら、「同じ授業を受けていても、目標を持っている人はより多くを学べるようになる。」と言う。

「もちろん、このお金持ちの女性のように算数がわからない人、いや、もしかしたら店主をだまそうとしていたのかもしれないけど、そんな人にならないで欲しいという意味もあるけどね。」

はるかは本当に何年かぶりに顔を高潮させて自信に満ちた表情を浮かべていた。

恭子は「宇宙飛行士になりたい」と言い続けているはるかを、ようやく本気ですごい子だと納得できた。


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posted by 北乃 道晴 at 08:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 005.高井先生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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