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2009年04月17日

3.顕児(1)

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小学校の体育館。

子供たちが授業のドッジボールで盛り上がっていた。。

生徒たちが着ている体育着の胸と背中には「4−3」の文字。

「ああ、くそっ!」

「何ぼんやりやってんだよ!」

「やったぁ」

「今度はこっちの番だ!」

リバウンドボールをすばやく取り返した男子が、明らかにのろのろ逃げ回っている相手コートの男子のお尻に強烈なストレート・ボールをヒットする。

「ナイス!顕児」

軽快なフットワークで次々とヒットを連発する顕児。

「顕児を狙え!」

相手チームが続々と外枠から顕児めがけてボールを投げ続ける。

が、あっけないほど簡単に返り討ちにあってしまう。

「顕児君って体育はすごいよね。」はるかがポツリと呟く。

隣で恭子も無言でうなずく。

二人とも憮然とした表情で顕児を見つめながら。

二人は体育館のステージの下に並んで壁にもたれて体育座りをしていた。

二人とも体育着を着ていない。

ドッジボールに夢中になっている生徒たちは誰も二人の存在を気にしている様子は無かった。

審判をしている教師もゲームに集中していた。

まるで体育館の備品として「いつもそこにあるべき物」のように、恭子とはるかはそこに座り続けていた。


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posted by 北乃 道晴 at 22:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 003.顕児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月18日

3.顕児(2)

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いつものように、恭子とはるかは並んで校門を出た。

校門を出て左手に曲がり、校庭に沿って延びる歩道をのんびりと、振り返ることなく歩いた。

スクールゾーンの標識が括り付けられた電信柱を次々と通り過ぎながら、川沿いの堤防に沿う国道脇の歩道を、静かに話をしながら歩いていた。

そのとき、国道を挟んだ堤防の上から届いた大声が二人の会話をさえぎった。

「役立たず!」

はるかの肩がこわばる。

恭子はその大声に気付かなかったかのように、視線を遠い前方に固定しようと努力していた。

大声は続く。

「歩けてんじゃねーか!」

「受験勉強に体育はいらねーってか?!」

「置物みてーに黙って座ってないで、応援くらいしたらどうなんだ!?」

次々と別の声で、二人の頭を上から押し付けるように大声が飛んでくる。

「恭子!俺見たぞ。お前、自転車も乗れるんじゃねーか!」顕児の声だ。

「何で黙ってんだよ!」

「なーにが心臓病だぁ!」

『心臓病』

この言葉に反応するかのように、はるかがうつむき加減になる。

恭子は前方を見つめたまま、はるかの反応を察する。

「ウソじゃないなら、一度でも死にそうな様子を見せてみやがれ!」調子に乗った他の男子が言った。

恭子の胸に激痛が走る。

だが、決して手で胸を押さえようとはしない。押さえてはいけないと必死にこらえている。

「ガン!」、「ガン、ガーン!」

その瞬間、3つの石が二人をかすめて歩道脇のガードレールに叩きつけられた。

思わずはるかがしゃがみこむ。

恭子も思わず堤防に背を向ける。

「ピシーンッ!」

次の瞬間、恭子の目線の先にある民家の窓ガラスが割れた!

「うわヒロシ、どこ投げてんだよ!」堤防の上で大声が飛び交うと同時に、一斉に走り出す足音が遠ざかって行った。

辛うじて恭子が横目で堤防を見上げたとき、7〜8人の男子が猛ダッシュで駆けて行くのが遠くに小さく見えた。


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posted by 北乃 道晴 at 09:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 003.顕児 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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