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2009年04月14日

丘の上公園

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全くひと気の無い、夕暮れの公園。

小高い丘の上に作られていることから、『丘の上公園』と呼ばれている。

丘のふもとには駐車場があり、そこから公園までは自動車進入禁止になっている一本のつづら折の舗装された細道で結ばれている。

夕日に照らされながら、オレンジ色に反射した自転車が駆け下りて来きた。

ボーイッシュなショートヘアー。

折れてしまいそうな細い腕と足が、Tシャツとジーンズのショートパンツから伸びている。

ブレーキレバーから指を離したまま、顔に叩きつける激しい風を目を閉じて心地良さそうに楽しんでいる少女。

自転車とは思えない速いスピードで駐車場に飛び出してくるなり、一気にブレーキをかけて、2輪とも真横に滑らせながら駐車場の真ん中に止まる。

タイヤが砂に乗って立てた「ザキュザザァ!」という音がぴたりと静まり、だだっ広い駐車場の真ん中で1人きり静寂を味わっているかの様に顔を下に向けている。

16インチの女児向け自転車。

その自転車がまだ少し大きく見えてしまうほど小柄な身長。

「胸が苦しい・・・。」

誰に聞かせるわけでもなく、ポツリと呟きながら左手を胸に当てていた。

しばらくそのまま休んでいる様子だったが、ようやく深呼吸をして、心地良かった余韻を楽しむように再び目を閉じて天を仰いだ。


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posted by 北乃 道晴 at 21:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 001.丘の上公園 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月15日

2.はるかの夢(1)

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かわいらしい女の子の部屋。

丘の上公園から自転車で駆け下りていたあの少女がベッドに座り、友人のはるかが用意してくれているおやつとドリンク、そして壁中にはられた向井千秋さんらの宇宙飛行士のポスターに目をやった。

「またポスター増えてるよね。」

「うん、ワレンチナ・テレシコワの写真が手に入ったの。」

ロシア人で、1963年にボストーク6号で有人宇宙飛行に成功した世界初の女性・・・等々、説明を始めるはるか。

「恭子ちゃん、お菓子食べてね。」はるかが、ベッドに座っている少女を誘う。

ぼんやりと聞き流しながら、宇宙飛行士やロケット、スペースシャトルの写真だらけの部屋をあらためて見回す恭子。

「かわいらしい部屋なのに、やっぱり似合わないよねぇ。」と、不思議そうに言った。

照れくさそうに笑うはるか。

「そうなんだけどね(笑」

ようやく支度を終えて、はるかはテーブルに着き、恭子を見つめる。

「夢なんだもん。やっぱり、宇宙飛行士。」

が、その顔には諦めたような表情を浮かべている。

「なれるよ。成れないって決まってるわけじゃないもんね。」

「うん、時間はたっぷりあるよね。」

『4年3組 三咲はるか』と書かれたランドセル。

「今日も塾?」

「うん。でも、まだ時間あるから心配しないで。」

『私も、何か目標があるといいのにな・・・』

恭子はそう言いたかったが、口に出せず、

「さすが、受験生!」と、無理にテンションを上げて返事をした。

「いま出来ることって、これしかないからね。」

はるかも恭子と同様に、無理に作り笑いを浮かべながら返事をした。



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posted by 北乃 道晴 at 21:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | 002.はるかの夢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月16日

2.はるかの夢(2)

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「あんたも塾か何か、通う?」

恭子と家族が夕食をつついているときに母親が明るく言った。

が、まるで独り言のように聞こえた。

父親も弟もその話題には全く興味はないから返事をするはずはないし、まして恭子自身も返事をするわけがなかったからだ。

「そうそう恭子、自転車のタイヤが擦り切れそうになってるの知ってる?」今度は母親が恭子に返事を求める。

「今週末にでも自転車屋さんで交換してもらわないと危ないわね。」

「今年の春に買ったばかりだったよな。」食事を終えてソファで横になりながら、地デジ放送で番組表を眺めていた父親が背中から返事をする。

「タイヤ?」恭子も何のことだと視線を天井に向ける。

「そうよ、あれじゃブレーキかけても滑って止まらないでしょ。」

「はるかちゃん家にどれだけ熱心に通ってるかわかるな(笑」父親も明るく笑って話を打ち切ってしまった。

「タイヤって幾らするのかしらね・・・もう。パパのお小遣いで買ってもらおうね。」

まだ食事を続けながら、母親がうれしそうに笑う。

「うん、今週末ね。」恭子が確認するように言った。

「確かスキーも買わされた記憶があるなぁ・・・」と誰にも聞こえないような声で、母親に向かって背中越しに父親がつぶやいた。

が、その言葉には誰も返事をする気はなかった。


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posted by 北乃 道晴 at 22:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 002.はるかの夢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする




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